緊急雇用安定助成金:従業員が雇用保険に入っていなくても申請可能

 では、「緊急雇用安定助成金」が、どんな要件になっているのかを説明しましょう。これは、「雇用保険に入っていない従業員のための雇用調整助成金」に相当するものです。この助成金の対象は、従業員数がおよそ20人以下の会社や個人事業主かつ北海道を除いた地域で、2020年4月1日~12月31日までの休業に対して助成されることになっていましたが、現在では対象期間が2021年2月末まで延長されました。

 申請方法は、「雇用調整助成金」とほぼ同じです。そして、雇用保険に入っている従業員と入っていない従業員、双方が在籍している会社の場合、「雇用調整助成金」と合わせて申請することができますので、ぜひ活用しましょう。

 ただし、「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」は、「従業員に休業手当を支給していること」が前提になっているので、支払っていなければ助成金の支給対象にはなりません。休業手当を支給していない事業主は、「このままでは大切な従業員の雇用を守れない……」と頭を抱えてしまうかもしれませんが、そのような状況にも対応している支援策があるのです。それが「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」です。

 これは、従業員が自分で申請する種類のものになるのですが、申請書には事業主の方が署名する欄がありますので、積極的にご協力いただければと思います。次に、どのような仕組みになっているのかをご紹介することにしましょう。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金:休業手当を支給していない従業員も支援が可能に

「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」は、先ほども述べたように、従業員の方が自分で申請するものです。お金も従業員の個人口座に振り込まれるシステムになっています。

 支給要件としては、中小企業に勤める従業員が、新型コロナウイルス感染症の影響のために事業主の指示で休業し、賃金や休業手当を受けることができない場合に支給されます。金額は、休業前の賃金の8割となっていて、上限は11,000円です。事業主の負担は一切ありません。

 ただし、申請するには農林水産の一部の事業所を除いて、「労働保険番号」が必要になりますので、労災保険の書類などをあらかじめ準備し、番号を控えておくことをおすすめします。

 このように、休業手当を従業員に支給していないからといってあきらめる必要はまったくありません。しかしながら、今回ご紹介した助成金は、申請方法が簡略化されたとはいえ、専門用語が多く、それなりの時間と手間がかかることは否めません。申請がおっくうだと感じる方がいても無理のないことです。その場合は、お近くの社会保険労務士にご相談することをおすすめします。助成金申請は労務管理のプロに任せて、本業に100%注力できる状況を作ってはいかがでしょうか。

※1 厚生労働省:「雇用調整助成金の特例措置等を延長します」
※2 厚生労働省:「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(12月15日のお知らせを参照)


山口善広
ひろたの杜 労務オフィス
社会保険労務士
https://yoshismile.com

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HRプロ編集部

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