コンパクトで均整が取れている

 “灯台”といって、多くの人がイメージするのは犬吠埼灯台や御前埼灯台のように、かなり高くて立派な建造物で、上に登って見学できるものではないでしょうか。私も同じでした。

左が犬吠埼灯台(塔高31.3m、初点灯明治7年、撮影:牧村あきこ)、右が御前埼灯台(塔高22.4m、初点灯明治7年、photo: Qurren (トーク)Taken with Canon IXY 430F (Digital IXUS 245 HS), CC BY-SA 3.0、ウィキメディア・コモンズ)

 灯台にはさまざまな大きさと形のものがあります。立石岬灯台の塔高は約8mしかありません。そこがかえって魅力なのですが、なぜこのように低いのでしょうか。

 それは、標高(平均水面から灯火までの高さ)が関係しています。犬吠埼灯台や御前埼灯台の標高は50m前後。対して立石岬灯台は122mです。つまり、そもそも高いところに建っているので、塔自体を高くする必要がなかったのです。

 この写真を見るとそれがわかります。登るのに苦労したのもそういうわけだったのです。

対岸から見た立石岬灯台(写真:藤谷良秀、CC BY-SA 4.0、ウィキメディア・コモンズ)

 もう一つの魅力が、塔の下部にある、部屋のようになっている部分です。“付属舎”というらしいのですが、現在では点灯制御装置や気象観測装置などが収められています。似たような付属舎を備える灯台はほかにもありますが、それらはもっと径が大きかったり、半円形だったり、四角形だったり・・・。わずかに膨らんだ小ぶりで円形の付属舎が、立石岬灯台の大きな特徴です。

 コンパクトで均整が取れている。これが立石岬灯台をかっこよく感じられる大きな理由でしょう。

 もちろん灯台の魅力は、塔そのものの形だけではありません。

 多くの灯台は岬の突端や島などに立っています。このため、周りの風景を含めた遠景が美しいものもあります。無人島や切り立った崖など、アプローチが困難なところにわざわざ行くことを楽しむ人もいるでしょう。

 さまざまな観点で、自分の気に入ったものを見つけることができる点が、灯台のよさです。みなさんも写真集や写真サイトで探してみてはいかがでしょうか。思いのほか、いろいろな形の灯台があることにも気づき、心ひかれるものに出会えるかもしれません。

日本人による初の灯台?

「カッコイイ」という主観の混ざった観点以外に、立石岬灯台が持つ魅力があります。

 立石岬灯台は割と地味です。「石造りで最古」とか、標高や光度が最大、というような“日本一”の要素がなく、知名度があまり高いとは言えません。

 明治時代に建設された現役の灯台の中で、歴史的・文化財的価値が高いものを「保存灯台」として海上保安庁が選んでいますが、ランクは4つのうちの3番目(ランクC)です。1998年に全国からの投票で選ばれた「日本の灯台50選」にも入っていません。

 何か自慢できる特徴はないでしょうか。