為替変動の影響を受ける外貨建て終身保険、リスクヘッジのための金

 次が最後になりますが、⑦外貨建て終身保険と、⑧金について。この2つに関しては、「利回り」という考え方にはなかなか合致しません。そういう意味では本当の番外編になります。

 外貨建て終身保険は、超低金利の国内では商品化できなくなった保険を、日本より金利が高い国の通貨で運用するタイプの死亡保険商品になります(実際は主に外国債券で運用されます)。米ドル建ての場合はドルで保険料を支払い、受け取る保険金、年金、満期保険金、解約返戻金などもドルになります。通貨は米ドル以外にもありますが、ドル建て終身保険が代表的な商品となります。

 ただこの外貨建て終身保険、為替リスクを伴うのは避けられません。円安か円高かで、保険の価値が大きく動いてしまいます。株式や投資信託には不安がある一方で、海外通貨を持ってみたい人、資金にゆとりがある人が外貨建て終身保険に適しているといえるでしょう。ただし、最近は米ドルも金利低下による積立予定利率の引き下げで、その分だけ保険料も高くなっており、魅力は半減しているといえます。
 外貨建て保険の鉄則は、円高(ドル安)で加入して円安(ドル高)で解約することですが、仮に円安での解約がうまくいったとしても、保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取る時に、ドルを円に戻す為替手数料が別途かかるので注意が必要です。

 このように、外貨建て終身保険は為替の変動で利益(または損失)が出る可能性がある商品なので、「利回り」を考えるなら、支払った保険料と、解約時点の為替差益の儲け(または損)で見る必要があります。
 ちなみに、保険会社は保険を中途で解約などされてもいいように、最近では保険料を下げる代わりに10年以内の解約は返戻金をダウンして、10年を超えると返戻金をアップする商品も出てきています。外貨建て終身保険は死亡保険付きで比較的安く加入でき、お金の積み立てもできる商品ですので、理解のうえ加入すればいい商品でしょう。ただ、今後円安が進行することを前提にした商品設計である点は、個人的に気になるところではありますが……。

 最後に⑧金について。金は預貯金、債券、株式などとは全く異なる資産です。金自体が「現物資産」であり、株式などのように信用度によって価値が左右されることはありません。また、金は債券のように誰かの債務でもなく、いわゆる信用リスクがない資産になります。よって、世界の政治や経済情勢が悪化し、株式や通貨の信用度が低下したときにも一定の価値が認められてきました。

 つまり、金は危機的な状況が起きた時のリスクヘッジの役割と、資産全体の価値を保全する保険の役割を果たしてくれるといえます。したがって、基本は世界経済の情勢が安定しているときに購入して、危機的な状況で売るということになります。ただ、保有しているだけでは利子や配当はありません。あくまで資産全体をリスクヘッジするのが目的だと思って購入するのがベストでしょう。
 金は「全資産の利回りを守る投資商品」と位置付けてください。