先日、知人からGoToトラベルキャンペーンを利用して旅行をしてきたという話を聞きました。1泊目は個人経営の旅館、2泊目はチェーン展開をしている旅館に泊まったそうです。1泊目の旅館はごく一般的な設備だったそうですが、夕食時の時間も融通が利き、ベテランの仲居さんが、ソーシャルディスタンスは守りながらも、かいがいしく、時には冗談を言いながら楽しく接客をしてくれたそうです。2泊目の旅館は、設備も豪華で接客も良かったのですが、夕食の時間が2パターンの時間しか選べず、給仕する若い従業員たちがシステマティックなマニュアルに従って懸命に仕事をこなしているように感じたそうです。知人は、「どちらもよかったけれど、2泊目はなんだか慌ただしくて落ち着かなかったなあ。自分は1泊目のほうが個人的には好きだった」と話していました。

効率化は、取引先や顧客が不利益を被らないかという検証とワンセットで

 今のコロナ禍の状況であれば、経営側としては少しでも無駄のない、効率的なマネジメントをしなければいけません。なるべく同じ時間にたくさんの人が同時に食事をしてくれたほうがいいいですし、融通が利くサービスは減らしたほうがコストもかからないので、そのような経営方針や指導も間違いではないでしょう。

 ただし、サービスを受けるほうの考えはまた別というのが難しいところです。たとえば接客に関していえば、「スマートな接客なほうが好き」という人もいれば、「給仕の人と雑談などができる緩い感じのほうが好き」、という人もいます。パンフレットやネットの口コミで事前にそこまでわかれば好きなサービスのほうを顧客は選べばいいのですが、やはり行ってみて初めてわかることもあります。

 生産性向上や業務効率化を語るとき、あるいは実行する時に、よく「自社の都合だけ」、「自分個人の都合だけ」を考えている場合があります。その効率化などによって、取引先や顧客が不利益を被り、「以前のほうが良かった」、「損をした気分になった」などと感じてしまうリスクはないか、という検証をワンセットにして行わなければいけないと私は思います。そうしないと、生産性向上や業務効率化をしたばかりに、逆に顧客が離れていく。つまりコストは減ったけれど、「売上はもっと減った」、ということになりかねないからです。