連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第26回。毎日数万人の新規感染者が発生し、2度目のロックダウンを余儀なくされたフランス。なぜこれほどまで感染が拡大してしまったのか──讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が、フランス駐在のビジネスマン、瀧川功氏に現地の生の声を聞く。
11月に入り、日本では新型コロナウイルス感染症が再び急速に拡大しています。しかし、より深刻な状況にあるのがヨーロッパです。フランスでは、10月30日から2度目となるロックダウンに踏み切ったものの、11月8日に1日の新規感染者数が過去最高となる8万6000人を記録しました(データはWHOによる)。いったいフランスではなぜ感染が拡大したのでしょうか。日本との比較も含め、在仏のビジネスマン・瀧川功さんに実情を伺いました。
◎瀧川 功(たきがわ・こう)氏
東京銀行入行後、主に大企業取引に従事。海外拠点勤務が長く、フランス7年、アメリカ西海岸9年と31年間の銀行員人生の半分以上を海外で過ごす。2012年から2016年まで、三菱東京UFJ銀行パリ支店長。現在、化学品メーカーのフランス現地法人駐在。他に日本カトリック学校連合会役員、パリ日本館館長選考委員など。
讃井 フランスでは約1か月間のロックダウンが実施されています。まず、2度目のロックダウンにいたった経緯を教えていただけますでしょうか。
瀧川 数日前、ICUの病床占有率が85%まで上昇したというニュースがありました。ロックダウン後もまだ状況が好転していないというのが現状です。
新型コロナ感染症の新規感染者数が増え始めたのは、夏季休暇期間(バカンスシーズン)が終わる8月下旬頃からです。私が渡仏した10月11日には、新規感染者数は2万6000人に上りました。政府は10月17日から約4週間の夜間外出禁止令(Couvre-feu:クーヴルフ=門限)を決め、夜21時から朝6時の間の外出を制限することにしました。ところが、“門限”の21時ぎりぎりまでカフェやレストランに多くの人が集中し、20時台のメトロや電車、市バスなどが大ラッシュとなってしまいました。満員のカフェの中で人びとがマスクを外して喋り続けている様子を見て、「これはやばいんじゃないのか」と思いました。