連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第21回。災害時の感染対策をオーガナイズする――“災害時感染制御支援チーム”を立ち上げた櫻井滋・岩手医科大学教授がめざすものとは? 讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が訊いた。

 台風14号の接近は、あらためて避難所の新型コロナウイルス感染症対策の重要性を浮かび上がらせました。前回に続き、避難所の感染制御の第一人者である櫻井滋・岩手医科大学教授に避難所感染対策の現在進行形の取り組みについて伺います。

櫻井滋教授

◎櫻井滋(さくらい・しげる)
岩手医科大学医学部教授、岩手医科大学附属病院感染制御部長。金沢医科大学医学部卒業後、沖縄県立中部病院内科呼吸器科・集中治療部、米国ワシントン大学呼吸器・集中治療医学部門などを経て岩手医科大学へ。現在、日本環境感染学会災害時感染対策委員会委員長なども務める感染制御の第一人者。

讃井 前回、避難所の感染対策で重要なのは、オーガナイズすることだと伺いました。私自身、新型コロナ感染症の第一波で国、県、市との連携で難しく感じたところがありました。東日本大震災の避難所においても、同じような難しさがあったのでしょうか。

櫻井 そうですね。どの都道府県も同じだと思いますが、岩手県では感染対策の中枢は県庁にあり、その指示で各保健所が動くという建て付けになっています。しかし、災害対策の主体は基本的に市町村なので、現実的には市町村長が判断することになります。また、ややこしいのは中核市である盛岡市だけは独自の保健所を持っているため、県の指示に従う立場ではありません。

讃井 たしかに、埼玉県でも政令指定都市のさいたま市は市が管轄する保健所を持っていて、県の管轄ではありません(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/hokenjo/hokenjo-itiran.html)。連携が良くないように見えることがありました。

櫻井 そういった行政システムの錯綜を整理しないといけないと思いました。