そのポジションこそが、自分にとって一番楽で、理想的なセットポイントだった。実際にその位置から打ってみると、力まずに、自然とシュートの距離を伸ばせるのだ。

万人に正しいものは存在しない

 そのセットポイントの位置が、人とは少し違っていた。

 日本人には、額ひたいの前や頭の上にボールをセットしてシュートを打つ選手が多い。だが、わたしは顔の横、右側の眉毛に右手の親指が当たるくらいの位置からボールを出す。基本と言われる体の正面にセットすると、ものすごく違和感がある。顔の横が一番、楽で「カチっとハマる」ポイントだ。

 もし、「体の正面にセットして打て」と矯正されていたら、おそらく日本大学でキャプテンになることもなければ、インカレでMVPを獲ることもなかっただろう。

 逆に、このフォームでほかの選手が打っても、いい結果は望めないだろう。

折茂武彦・著「99%が後悔でも。」

 これはわたしの体、わたしの特性だけに適しているフォームだからだ。

 それぞれの形、それぞれのやり方でやればいい。翻ってそれは、「正しい形」「正しいやり方」などないことも示している。

 バスケットボールに限ったことではない。自分だけの「何か」を見つけ、それを磨き上げていけるかどうか。

 誰かの真似をしてもダメだし、他人に「自分の形」を見つけてくれというのも無理な話だ。

 自分自身で考え、行動し、見つけていく――。その繰り返しが重要だ。

(10月31日の新刊イベント決定。『99%が後悔でも。』折茂武彦・著より再構成)