新型コロナウイルス感染症対策として、一気に注目を浴びることになったテレワーク。ところが、このテレワーク制度を利用することにより、従業員の将来の年金額が当初の予定よりも少なくなってしまう可能性があるという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。

6割を超える企業がテレワーク導入へ

 テレワークの導入に踏み切る企業が増えている。東京商工会議所が2020年6月17日に発表した「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」の調査結果によると、テレワークの実施率は67.3%であり、3月調査時に比べて41.3ポイント増加したという。

 特に、政府が推奨する在宅ワークは、新型コロナウイルス感染症対策の一環であるのはもとより、「働き方改革」の実現とも相まって導入する企業が増加傾向にあるようである。このように、在宅ワークを中心とするテレワークの普及にともない、制度のメリットや課題が議論される機会も増えてきた。

 しかしながら、議論の場ではあまり取り上げられることのない問題点が、在宅ワークには内在している。企業が在宅ワークを取り入れることにより、「従業員が将来受け取る年金が、当初の予定よりも減ってしまう可能性がある」という問題点である。

通勤手当の削減が年金減額につながる

 厚生年金に加入しながら働く従業員は、原則として65歳から「老齢厚生年金」という年金を受け取ることになる。老齢厚生年金の金額を大きく左右するのが、厚生年金の保険料計算の基になる「標準報酬月額」という数値である。

 例えば、会社から支給される給料額が35万円以上37万円未満の場合には、標準報酬月額は22等級の36万円と決定される。現在、厚生年金の標準報酬月額は1等級~32等級まで(2020年8月までは31等級まで)に分かれており、給料が高くなるほど大きな数字の等級に、給料が低くなるほど小さな数字の等級に当てはめられることになる。

 在宅ワークの普及によって通勤手当が減額、または不要になった場合には、その分、従業員が受け取る給料額も低下する。標準報酬月額は会社から支給される通勤手当も含んで決定するルールのため、通勤手当の減額によって給料額が低下し、その結果として標準報酬月額も下がれば、当然、将来の年金額はマイナスの影響を受けることになるわけである。