(姫田 小夏:ジャーナリスト)
日本のメーカーが海外進出を図る際、有力候補地の筆頭に挙がるのがタイである。トヨタに代表されるように、タイに最初の海外拠点を設立した企業は少なくない。日系サプライヤーの進出が始まったのは1970年代。以来、日本の自動車メーカーが現地生産体制を強化していくなかで、タイはASEAN(東南アジア諸国連合)最大の自動車生産国に発展した。
親日国ということもあり、タイには自動車産業のみならず多くの日系企業が進出した。外務省の統計によると、2018年の在留邦人数は7万5647人に達し、米国、中国、オーストラリアに次ぐ第4位となっている。1997年の2万3292人と比較すれば、20余年で3倍以上に増加したことになる。近年は、「チャイナプラスワン」としてタイ進出ブームが起こり、2012年には5万5634人と前年比で11%も増えた。
文部科学省によれば、2020年4月時点で世界に日本人学校は95校あると言うが、バンコク日本人学校は最も歴史が古く、最大の規模を誇る。2000年代には中国の上海日本人学校と生徒数を競ったこともあったが、いまなお世界最大の日本人学校であり続けている。
バンコク伊勢丹がついに閉店
だが、ここに来て日系企業のタイビジネスが転換期に差し掛かっている。