竹下、角栄、小泉~歴代3政権との類似性

 筆者は1年前、本サイトで「菅官房長官が次期首相に最も近い」と予測した。

(参考記事:「中曽根裁定」で読み解く「ポスト安倍」)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57633

 中曽根康弘が竹下登を後継に指名した「中曽根裁定」と比較し、菅氏が後継に収まると考えたからだ。1年後の今、複数の報道を見る限り、実質的に安倍首相が菅氏を後継指名したもようだ。辞任表明の当日、安倍首相は周囲に「次は菅さんに」と漏らしたというのだ。まさに「安倍裁定」である。

 後継指名のプロセスの類似性、地方振興に力を入れている点で、近日発足する菅政権は、竹下政権のような性質を含有する。竹下政権は多くの派閥が支持する盤石な党内基盤を背景に超長期政権が確実視された。菅氏は無派閥であり、派閥に批判的とはいえ、主要派閥の支援を得られている点で類似性がある。竹下も外交とはあまり縁がなく、外交に自信をもっていた中曽根の教えを乞う姿勢を見せた。前任者が「外交が得意」という要素も、菅政権と竹下政権の共通点である。

 また世襲ではない、たたき上げという点に注目すると、自民党政権では海部俊樹以来だが、真っ先に我々が思い浮かべるのは、やはり田中角栄である。田中政権も「列島改造」に象徴されるように具体策が武器だった。菅氏は雪深い秋田の山村出身であり、そこだけをみると雪国出身の田中とも親和性がある。田中は挙党一致の観点から、閣僚・党役員に実力者をそろえてバランスを取った。菅氏も同様の理由で、人事面では実力者を配置せざるを得ないかもしれない。

 規制改革がライフワークで、改革路線がはっきりしているのも、菅政権の特徴となりそうだ。その点では、菅氏が総務副大臣を務めた小泉純一郎政権の方向感にやや近い。当時の竹中平蔵総務相は「新自由主義の権化」としてやり玉に挙げられたが、竹中氏の下で副大臣を務めたのは菅氏である。障壁となっている法律や規制を見直し、「官から民へ」を加速させることの政策的効果を知り抜いている。

 竹下、田中、小泉の3政権は、戦後政治史の中ではいずれも存在感がある。菅政権は「カラーが見えない」ところか、イデオロギーにとらわれないからこそ、女性活躍、働き方改革、デジタル分野における改革実行型の強力政権になる素地がある。(一部敬称略)