8月15日、千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝する菅義偉官房長官(写真:Motoo Naka/アフロ)

 世界190カ国、約2億人が利用する動画配信サービス「ネットフリックス」(Netflix)が快進撃を続けている。特にオリジナルドラマの質の高さには定評があり、政治ドラマ『ハウス・オブ・カード/野望の階段』(2013~2018、シーズン1~6)のヒットは記憶に新しい。

 国務長官就任の約束を反故にされたベテラン下院議員(ケビン・スペイシーが演じた)が主人公で、殺人、暴力、汚職などに直接関わりながら、権謀術数を駆使して現職大統領を辞任に追い込み、最終的に自ら大統領になるという物語だ。当時のオバマ米大統領をはじめ各国首脳もこぞって視聴したといわれている。毛沢東は「政治は血を流さない戦争である」と表現したが、『ハウス・オブ・カード』では「血を流す政治」を生々しく描いている。

イギリス政治の深淵を描いた英国版『ハウス・オブ・カード』

 米国版が、英国版『野望の階段/ハウス・オブ・カード』(1990~1995、3部構成)のリメイクであることは改めて強調したい。こちらは英国政治の深層を知る人物の小説が原作で、BBCが製作した。30年前の作品とはいえ、名優イアン・リチャードソン演じる主人公(保守党院内幹事長)の大胆で容赦ない“攻撃”、いや、極悪非道ぶりはかなり衝撃的だ。コカインに殺鼠剤を混ぜて党の広報担当者の命を奪ったかと思えば、都合の悪い事実を突き止めた女性記者を議事堂の屋上から突き落として殺害してしまう。現職首相やライバルをスキャンダルで次々に沈めていく過程は米国版以上の迫力がある。Amazonプライムでも視聴できるので、興味のある読者はぜひご覧いただきたい。

英国版の『野望の階段/ハウス・オブ・カード』(画像はAmazonプライムビデオより)

 このように、海外では現実政治をテーマにしつつ、サスペンス的な要素を加え、権力闘争の凄絶さ、醜悪さ、怨念を真正面から描く映像作品が相当数生み出されている(韓国も量産している)。