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写真:つのだよしお/アフロ

「ポスト安倍」をめぐる自民党内の構図が変わりつつある。

 安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相は、これまで岸田文雄政調会長を意中の候補としてきたが、いつまで経っても求心力が上がらない状況にしびれを切らし、別の選択肢を探り出したのだ。

 首相は体調に不安を抱え、続投は困難と見られる。そこで後継にはここにきて菅義偉官房長官の名が急浮上しており、首相は菅氏が肝いりで進める観光支援策「Go To トラベル」で共闘するなど、不仲だった関係の修復を急いでいる。

「岸田がこの調子だと……」

「平時なら『岸田首相』でいい。しかし、新型コロナウイルスの問題で政権の求心力が落ちている今は、岸田がこの調子だととても任せられない……」

 麻生氏は7月下旬、2人きりで面会した麻生派の側近に、ポスト安倍の行方を神妙な面持ちでこう漏らした。

 この側近は、麻生氏から今春まで、「岸田派は動きが鈍いから、お前が他派の議員と接触を増やせ」と票固めのような指示を受けてきた。それと逆行するような一言に、「明らかに首相レースの風向きが変わった」と感じたという。

 これまで麻生氏は、秋に衆院を解散し、遅くとも10月までに総選挙を行うべきだと首相に繰り返し説いてきた。首相の神通力が残るうちに総選挙に臨めば、与党は議席を減らしても野党に政権を奪われるような大敗は避けられるという見立てからだ。

 さらに選挙を経て、首相が強い求心力を保ったまま岸田氏への禅譲を表明し、総裁選に突入すれば、政敵の石破茂元幹事長に政権が渡ることを防ぐことができる。

 これが麻生氏の描いたシナリオだった。

 しかし、肝心の岸田氏は首相らの期待を裏切り、低空飛行を続けるばかりだ。

 岸田氏は2020年度第1次補正予算の編成過程で、国民への現金給付をめぐり、与党の政策責任者として当初は全国民への一律給付を提案したが、財務省の反対を受け、生活困窮世帯に30万円を配る方針へと転換した。しかし、閣議決定までした後に、二階俊博幹事長と公明党が猛反発し、首相は全国民1人当たり一律10万円給付へと政策を変えた。

 これで岸田氏の政治家としての信頼度が大きく傷ついた。

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