自民党総裁選への出馬を発表した菅義偉官房長官(写真:つのだよしお/アフロ)

 9月14日の自民党総裁選は、菅義偉官房長官が圧勝する流れで進んでいる。細田派(98人)、麻生派(54人)、竹下派(54人)、さらに二階派(47人)、石原派(11人)の5派の支持に加え、無派閥の中堅・若手でつくる「菅グループ」(衆院14人、参院11人)を合わせると、単純計算で289人に達する。394人の衆参国会議員のうち、実に73%を固める盤石ぶりである。

 9月16日の首班指名選挙で第99代内閣総理大臣に就任するのは確定的である。このため、多数のメディアが首相就任を前提に菅氏の人物像や政治遍歴を熱心に報じはじめている。そうした中で、一部有識者や大手マスコミから「菅カラーがない」「外交ビジョンがない」といった指摘が出ている。これは誤解と言わざるを得ない。

個別具体の政策がすべて

 菅氏の政策や理念、外交方針は9月5日に発表した主要政策のパンフレットやこれまでの言動から明白である。まもなく誕生する菅政権は、改革実行型のインパクトある政権になる可能性も秘めている。

 5日に発表された政策のキャッチフレーズは「自助・共助・公助 そして絆~地方から活力あふれる日本に!~」だ。

https://ameblo.jp/suga-yoshihide/entry-12622752975.html

 柱は「新型コロナ危機克服」、「縦割り打破なくして日本再生なし」、「雇用を確保 暮らしを守る」、「活力ある地方を創る」、「少子化に対処し安心の社会保障を」、「国益を守る外交・危機管理」の6本に絞られた。最有力首相候補が掲げる政策としては確かに地味ではあるが、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長の前のめりな、抽象的記載が散見される下記の「ビジョン」と比較すると、菅氏の政策はコンパクトで具体的で、地に足がついている印象がある。

<岸田ビジョン>「分断から協調へ」
https://kishida.gr.jp/cms/wp-content/uploads/2020/09/249a7ec6954340f6999d7bf077a41ae9.pdf

<石破ビジョン>「令和新時代の日本創生戦略」
http://www.ishiba.com/sousaisen/wp-content/uploads/2020/09/200901_A4chirashi_2.pdf