確定申告をしないオーナーも多いけれど……

 次は、不動産事業としての認定基準について触れたいと思います。
 よく言われる基準に「5棟10部屋」というものがあります。この5棟10部屋とは、何を意味するのでしょうか?

 「5棟」とは貸家5軒を意味し、「10部屋」とは貸家の部屋10室を意味します。税制区分上、貸家を5軒、もしくは貸家の部屋を10室以上所有して賃貸業を営んでいたら、本格的な「事業」として認定され、確定申告の方法も「白色」から「青色申告」に変更することができます。
 できるならば、「青色申告」を目指すことをお勧めします。

アパート経営アパート10室以上を経営すれば、白色申告から青色申告に変更できる

 「白色申告」は年収2000万円以上の給与所得者か、別所得が20万円を超える方が申告する制度です。不動産投資においても、まずは白色申告からスタートしますが、アパートやマンションのオーナーの中には「俺が貸しているのは一軒家だけだから、せんでもいいや」と言って申告しない方も多く存在します。確定申告をしなければ後に税務署から指摘されて、過去の分まで追徴課税されるだけです。税務署も銀行も、所得を隠すことを嫌がります。税金を払いたくないからと所得を隠してもばれますし、社会的信用も地に落ちるだけです。
 資金のショートが起きた時に銀行から融資を受けられるかどうか、いつ税務署の調査が入っても問題ないかどうか、そのあたりを覚悟のうえで行動してくださいね。

青色申告なら家族への給与も必要経費扱い

 不動産事業が順調で「5棟10部屋」の条件を満たし、「青色申告」に変更できると、キャッシュフローは格段に向上することになります。青色申告の大きな利点は、給与所得者には縁がない「必要経費」が計上できることです。

 青色申告では「現金の出ていかない必要経費」を増やすことが一番の節税の早道になります。たとえば青色申告になると、「専従者給与」と「青色申告特別控除」を支出欄に計上できます。専従者給与とは家族に支払う給与のことで、青色申告特別控除とは、10万円もしくは65万円の所得控除を受けられる制度です。
 減価償却費に加え、専従者給与も青色申告特別控除も、大家が実質的に現金を出すことはありません。経費として帳簿に上がるだけになります。将来、ご夫婦で不動産経営を営むことになれば、給与を出しながら、その給与を経費にすることもできます。

 アパート経営がうまくいけば、定年後も目減りしていくであろう年金に、不動産賃貸業を通じて追加の収入が得られ、「余裕のある時間と生活」を手に入れることが可能です。これこそ、不動産経営の醍醐味だと思いませんか?
 これまでお話ししてきたように、物件選びも物件の管理も決して簡単なことではないのですが、最終的には「やれるか? やってみるか?」に尽きるのでしょう。

 次回は不動産投資から離れて、一般的な資産運用の話に戻りたいと思います。長引くマイナス金利状況の中で販売されている運用商品や、その金利などについて考えていきます。