「ワーク・ライフ・バランス」で得た「余裕」や「ゆとり」は仕事や家事に還元するためにある
では、個人単位で見たとき、どのような「アイデンティティ」があり得るのか。
(1)仕事重視型
(2)家庭重視型
(3)仕事&家庭重視型
(1)は文字どおりキャリアアップを目指すタイプである。仕事優先主義といってもよい。高学歴で、一定のスキルレベルにある人に多く見られる。
(2)は私生活を最優先するタイプである。仕事はほどほどに、一定の収入が安定的に入ることが目標となる。
(3)は、(1)(2)ともに重視したいというタイプである。最近では、このタイプを目指す人が多いかもしれない。
これら、個人単位の「アイデンティティ」を夫婦での組み合わせで整理すると、基本的には次の6分類となる(夫婦おのおのに選択肢があるので、最終的には9分類となる)。
(a)仕事重視型×仕事重視型
(b)仕事重視型×家庭重視型
(c)仕事重視型×仕事&家庭重視型
(d)家庭重視型×家庭重視型
(e)家庭重視型×仕事&家庭重視型
(f)仕事&家庭重視型×仕事&家庭重視型
「ワーク・ライフ・バランス」を前提に考えると、(a)や(c)は家計的には余裕がある一方、世帯ではマイナス面も多くなる。家事のアウトソースや機器の調達、子育て経費、外食などの費用の増加、家事・教育が時間的制約で疎かになりがちでもある。
(d)は家計の維持が難しくなる可能性が高く、一般的ではないだろう。
以上の折衷タイプが(e)や(f)になる。最近は、(f)を志向する夫婦が多くなっているともいわれている。言葉の響きはよいのだが、誤解を恐れずに言えば「欲張りタイプ」であるだけに、(a)や(c)のタイプのような割り切りもできないだろう。従って、現実的には最も「ワーク・ライフ・バランス」が難しいかもしれない。
最後に、改めて「ワーク・ライフ・バランス」=「仕事と家事・育児の両立」ではないことを力説しておきたい。仕事・家事・育児の生産性を高め、「自由でゆとりのある生活時間」を増やし、そこでできた「余裕」や「ゆとり」を仕事や家庭にフィードバックすることこそが本質である。この本質を見失わないようにしなければならない。
大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |