受講者が能動的に学習に参加する学習形態「アクティブラーニング」。近年、社内の教育や研修に取り入れる企業が増えてきている。背景には、ビジネスパーソンに求められる能力が変化していることがある。生産性を重視する社会構造に変わり、自ら主体的に課題を発見し、新たなアイデアを用いながら、周囲を巻き込んで課題を解決していくことがビジネスの現場で求められるようになってきた。本記事ではアクティブラーニングの内容やメリットについて紹介する。

「アクティブラーニング」とは?

「アクティブラーニング」とは、受講者自らが能動的に取り組む学習方法を指す。従来の研修でよく見られる、講師がテキストや資料の内容を受講者に解説する形式とは異なる手法だ。受講者同士で情報を発信するのが、アクティブラーニングの特徴と言える。

 例えば、企業の研修として実施する際は、議論やゲーム、ビジネスシミュレーションなど、グループワークが中心となる。受講者は自身で情報を集めて発表したり、一人ひとりに異なる資料を渡してディスカッションしたりする。講師は基本的に、受講者に対して、「これについて調べてみてはどうか」、「これについてはどんな意見か」など、気づきを提供する。講師の役割も従来の研修とは異なっている。

「アクティブラーニング」が注目されるようになった背景とは?

「アクティブラーニング」は1980年代のアメリカから始まった。教育の大衆化を進めるなかで、「今の学習方法では理解が進まない」、「モチベーションを保てない」といった声が教育の現場からあがったという。学習方法を見直す動きがアメリカ国内で生まれ、学習者が主体となる学習方法が考案される。それがアクティブラーニングのはじまりと言われている。

 日本で注目されるようになったのは、2012年8月に文部科学省が開催した中央教育審議会での答申がきっかけだ。ここで日本の教育現場でも、アクティブラーニングを導入する必要性が問われることになった。

「教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブラーニング)への転換が必要」というのが、答申の主な内容になっている。

 つまり、「個々の学生の認知的、倫理的、社会的能力を引き出し、それを鍛えるディスカッションやディベートといった双方向の講義、演習、実験、実習や実技等を中心とした授業への転換に取り組む必要がある」と述べている。この答申によって、大学、高校などの教育機関や関係者から注目されるようになったのだ。

 ビジネスにおいてもアクティブラーニングが活用されるようになったのには、どのような背景があるのだろうか。それは社会構造の変化が大きい。日本は少子高齢化に伴い、労働人口が減少の一途を辿っている。従業員一人ひとりの生産性が重要視され、自ら主体的に課題を発見し、新たなアイデアを用いながら、周囲を巻き込んで問題を解決していける人材育成が急務となっている。そこで、社内の教育や研修においても、アクティブラーニングを導入する企業が増えたのだ。