4月に米民主党指名争いから撤退表明を表明したサンダース。(AFLO)

2016年の大統領選でトランプが当選した背景には、ヒラリー・クリントン氏が民主党候補の座を最後まで争ったバーニー・サンダースの票を取り込めなかったことにあると言われている。今年の選挙でも大統領選を目指していたサンダースの影響力は、撤退した今でも着実に大きくなっているという。

米大統領選「サンダース」の影響力

 2020年アメリカ大統領選挙の民主党候補がバイデンで決まっている中で、まだサンダースの政策を語る意味があるだろうか。筆者は、大いにあると考えている。

 バイデンが本選挙で勝利を収めるためには、サンダース支持者の票が必要となる。2016年のヒラリー・クリントンの敗北の大きな理由は、サンダース支持者が本選挙でヒラリーに投票しなかったからである。中にはトランプに投票したサンダース支持者さえいた。ヒラリーはこの層に見捨てられ、本選挙で敗れた。

 その過ちを繰り返さないために、バイデンは自分の政策をサンダース寄りにして、その支持者の票を取り込む必要に迫られている。

 実際、バイデンはすでに、教育面や環境面でサンダースの政策に近づく努力をしている。バイデンは、公有地でのシェール・ エネルギー開発に反対し始めた。これはサンダースの革新的な環境エネルギー政策に、バイデンが歩み寄ったとみなされる例のひとつである。バイデンは、恐る恐るサンダースの大胆な政策に近づきつつある。

 外交面でも同じような傾向が見て取れる。そうであれば、バイデンが近づきつつあるサンダースの政策を知る必要がある。

 また、たしかにサンダースは民主党の候補者指名の獲得はあきらめたと発表したが、同時に残された予備選で自分(サンダース)に投票して欲しいと支持者に呼びかけている。

 民主党予備選の投票用紙には、まだサンダースの名前が印刷されている。なぜ、指名をあきらめた自分への投票を求めるという不思議な訴えをするのだろうか。

 それは、一人でも多くの代議員を獲得することで発言力を増し、民主党の選挙綱領に進歩的なプログラムを書き込ませるためである。サンダースの選挙キャンペーンは終わったが、アメリカ社会を変えて行こうとする運動は終わっていない。