(廣末登・ノンフィクション作家)
筆者は、2003年から暴力団研究に携わっている。爾来、多くの現役暴力団員や暴力団離脱者と袖振り合ってきた。そこで見いだせたことは、ほとんどの人が、生育家庭に何らかの問題を抱えていることである。
つまり、彼らにとって家庭が居場所として機能していないケースが多い。それはたとえば、家庭における何らかの機能不全に起因するものであり、貧困家庭、ひとり親家庭、葛藤家庭(DV等がみられる家庭)などが挙げられる。
「暴力団以外に居場所がなかったから」
筆者が有識者委員として参加した公的な調査・研究(非公開)でも、次のような調査結果が示された(主にアンケートによる調査。暴力団構成員412名、離脱者325名が対象)。
構成員の暴力団組織への加入理由を最終学歴別にみると、特に中学校卒業者で「暴力団以外に居場所がなかったから」(63.9%)、高等学校中退者で「暴力団に信じられる人がいたから」(32.4%)の割合がそれぞれ高い。
暴力団加入検討時の暴力団以外に信じられる人の存在の有無別では、「信じられる人はいなかった」とする人の多くが、加入理由として「経済的に厳しかったから」(36.4%)、「暴力団に入る方が楽だと思ったから」(28.6%)、「暴力団以外に居場所がなかったから」(27.8%)となっており、筆者の見解を支持している。
もっとも、非行や犯罪に手を染めず、真っ当な職業に就いている者であっても、家庭に何らかの機能不全を有しているケースは珍しくない。筆者の家庭も、貧困線以下の収入しか無かったし、日常的に父親の暴力を経験した。しかし、暴力団経験者の家庭における機能不全は、我々の想像を超えるケースが散見されるのである。