(山田敏弘:国際ジャーナリスト)
最近、世界各地でサイバー攻撃に関するニュースが急増している。
イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NSCS)は7月16日、新型コロナウイルスのワクチンなどを狙ったロシアからのサイバー攻撃が頻発しているとして、ロシア諜報機関などを非難する声明を発表した。この警告は、アメリカとカナダと連名で出されている。
またアメリカの司法省は7月20日、中国政府系のハッカー2人を起訴したと発表した。起訴状によると、中国在住の2人は、中国のスパイ機関である国家安全部(MSS)などのために世界各地でサイバー攻撃を行い、日本を始め世界12カ国で45の政府機関や民間企業へのハッキングを仕掛けたという。しかも新型コロナのワクチン開発や治療データなども狙っていた。
米国により続々と起訴される中国人ハッカー
こうした攻撃は氷山の一角に過ぎない。中国だけを見ても、欧米諸国へのサイバー攻撃はこの20年ほどの間に数え切れないほど実行している。米国が確たる証拠を掴んで攻撃者を起訴したサイバー攻撃に絡んだケースでは、2014年の人民解放軍の5人を皮切りに、2017年に中国人民間ハッカー3人、2018年にはMSSと関連ある民間ハッカー2人、2019年にも2名が起訴されている。
2020年1月にも、2017年に米信用情報会社エクイファックス社から個人情報を大量に盗んだとして人民解放軍のハッカー4人が起訴された。とにかく、中国の場合は、軍も民間も協力し合っている場合が多く、中国政府系ハッカーらのオペレーションになるとその規模も相当な大きさになる。
日本でもここ最近、読売新聞や日経新聞が相次いで国家の安全保障やサイバーセキュリティについての短期連載を掲載するなど注目度も高まっているのだが、先の米英のニュースなどを見るにつれ、筆者は日本のサイバーセキュリティにおける対応の鈍さが心配になる。
今年に入ってから、日本を代表する企業を狙ったサイバー攻撃が次々と表面化しているからだ。