世界の歴史の大きな転換点には、しばしば宿命的な人物が現れて、世界の方向を変えてしまう。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックから始まると私が予測する世界的な大恐慌は、人類の歴史の転換点になるだろう。
その時、世界の方向を変えてしまう人物は誰になるのだろうか。
1929年の大恐慌から始まる20世紀の歴史を転換させた最大の人物は、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領だった。
世界大恐慌によって、英国中心の帝国主義と植民地支配を中核とする世界システムの限界が露呈した。
パックス・ブリタニカの中心地英国が今にもヒトラーのナチスドイツに征服されようとする時に、ルーズベルトは英国の首相チャーチルに救いの手を差し伸べた。
同時に、英国の植民地支配を終わらせ、自由貿易を世界のルールとし、戦後の国連設立への協力を約束させた。
そして、戦後の世界の安全保障と軍事秩序は米国に集中することになった。第2次世界大戦の敗戦国だった日本が終戦からわずか24年で世界第2位の経済大国になれたのも、ルーズベルトがこのパックス・アメリカーナの体制を世界に打ち立てたからだった。
ルーズベルトが大統領に就任したのは、大恐慌の発生から4年目の1933年であり、この年にドイツではワイマール共和国が崩壊して、ヒトラーのナチスドイツが後継政権に選ばれた。
ルーズベルトは、17世紀にオランダから移住し、独立した米国の憲法制定に参画した大地主の名門一族の出身であり、海軍次官を経験してから一貫して海軍の増強を支援した。