空室リスクとサブリース契約

 前回に引き続き、私の実際の体験に基づいてお話しいたします。
 前提として、不動産入手物件状況は次のとおりです。

  • 間取りは1K
  • 25m2の木造2階建て、6部屋
  • 延床面積は151m2、敷地面積は173m2
  • 駐車場2台あり
  • 価格は購入当時(2006年時点、消費税込み)で土地1400万円、建物2500万円、諸経費込みで合計4170万円

 この物件を銀行借入3360万円で25年返済、金利年3%のローンと、残り810万円を頭金として購入しました。初年度諸経費(登記費用、銀行事務、司法書士手数料等)として、約250万円かかるとは思いもしませんでした。さらには上下水道加入負担金が約100万円かかり、何とも痛い出費でした(水道加入金は立地などによって金額などがかなり異なります)。

 収支などの計算の前提条件を踏まえて、事業収支計画の要約を見ていただきましょう(下図参照)。
 見てのとおり、損益計画の収入の部は、1年目~30年目まで家賃が一定(302万円)となっています。今流行りのサブリース(家賃保証)です。
 ところで、この事業計画書は入居率100%を前提としています。30年目には収支上、余剰金として3062万円となっています。優等生の計画書ですね。
 特に見ていただきたいのは、余剰金の推移です。1年目から25年目までは年に70万円前後の余剰金となっていますが、借入金の返済が終わった26年目からは剰余金が大幅にアップします。

 ここでよく考えてみてください。もしこの契約がサブリースではない場合、入居率100%のときに収支が70万円とすると、仮に入居者が1人退去すれば、年に収入が約50万円ダウン。収支は20万円になります。
 2人退去すると収入ダウンは100万円を超えてきます。そうなったらもうアウト。赤字に転落してしまいます。
 退去者が出れば、不動産会社に広告料を支払って、入居者を募集することになります。人の出入りが激しい時期であればすぐに入居者が見つかるのですが、時期を外すと、さらなる状況の悪化は避けられません。フリーレント(一定期間、家賃無料)も考えなければならないでしょう。

 このような空室リスクを避けようとするならば、サブリースが絶対条件です。管理費用として、家賃収入の10%程度を支払う必要はありますが、入居者が見つからずに赤字が発生するリスクは低減できます。

 ただし、サブリース制度も絶対ではありません。サブリースはオーナーに家賃を保証する制度なので、不動産会社は家賃を下げてでも空室をなくそうとします。そのため、サブリース物件は一般の物件以上に家賃下落のリスクが付きまとうことになります。空室リスクを補うための「完全」はないのです。