課題3:既存の人事課題がコロナショックによって悪化したものへの対応

 そもそもコロナ前に戻って考えてみると、多くの日本企業の人事はいくつも中長期的に取り組むべき大きな問題を抱えており、今後の大胆な構造改革が求められていました。少なくとも多くのことがうまくっている状態とは言い難かったと思います。

 私の見立てでは、コロナショックによってこれらの大きな問題が「中長期的な問題」から「目の前にある問題」に変化してしまったように感じています。ここでは、日本企業が抱えている問題そのものを丁寧に解説することは紙幅の関係もありできませんが、コロナショックによって一気に深刻になるだろう人材マネジメント上の大きな問題のうち、代表的なものを挙げてみました(下記図表)。

 評価をどうするか、報酬をどうするかという人事制度周りの話も出てきますが、より人材マネジメントの背骨の部分、つまり「雇用」や「働き方」がテーマになってくるでしょう。基盤がある程度できている制度は、なかなかキッカケがないと変えることが難しいものです。現在の状況を好機と見て、組織の慢性的な病気を直すためのきっかけとして手を付けてみるのも良いでしょう。いま改革に着手することで、5年後、10年後の組織における人材力に差がつくのではないでしょうか。

この状況を「将来の成長の機会」にする

 Withコロナ/Afterコロナという言葉と共に、「これからはこうなる」、「こう変わるべき」という情報が世の中で溢れかえっています。受け手にしてみれば、明らかに情報過多な状態かもしれません。しかし、問題の性質を丁寧に切り分けて、検討の優先順位を明確にしていけば、後になって振り返った時に「ターニングポイント」と言えるような局面になっていると思います。大変な状況が続く環境ですが、この状況を将来の成長の機会とできるように、お互い課題解決に取り組んでいきましょう。

 最後に、今回のテーマへの考えを、さらに深めるための質問をまとめてみました。ぜひ社内で意見交換し、人材戦略の立案に活用してみてください。

(1)コロナショックで、自社に一番インパクトがあった課題は3つのうちどれですか?
(2)コロナショックのタイミングで、実行すべき新たな取り組み、考え直すべき施策は何がありますか? それを挙げたのはなぜですか?
(3)特に手を打たない場合、5~10年後に自社に起きるリスクは何かありますか?

著者プロフィール

株式会社クニエ
HCMチーム マネージングディレクター
喜島 忠典

米系リクルートマネジメントソリューションズ、デロイトトーマツコンサルティング等を経て、現職。「企業の戦略実行力強化」をテーマに、数多くの組織・人事改革のプロジェクトに従事。変革期における組織・人材戦略のデザイン、人材マネジメントの仕組設計、およびチェンジマネジメントなどを手掛けている。主な著書に『部下が育つ組織をつくる技術(労務行政)』等がある。 コロナ対応やテレワークをはじめとした、組織・人事に関するオンラインセミナーも実施中。詳しくは、クニエのWEBページをご覧ください。

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