新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業がテレワークの導入を始めた。非常事態宣言の解除後も、引き続き在宅勤務を続けている企業も少なくない。テレワークは業務効率が上がるメリットがある一方で、コミュニケーションの面で課題も多い。非常事態宣言下に組織学会とHR総研が実施した調査によると、およそ半数の企業が「従業員への意思伝達が難しくなった」、「従業員同士の意思疎通が難しくなった」、「部門間の連携が難しくなった」と回答している。テレワーク時でも問題なくコミュニケーションを取るうえで、どのような点に気をつけなければいけないのか。課題やポイントをいくつか紹介する。
(1)テレワーク時のチャットは相手への配慮がポイント
メールには文頭の挨拶や定型的な締めの文章などを記載するマナーがある。チャットツールでは、そのようなかしこまった挨拶は不要。普段の会話のような調子で分からないことを聞けるのがチャットツールの長所だ。
スムーズなコミュニケーションには、できるだけ早く、端的にやり取りするのがポイントだが、決してそうはいかない場合がある。これこそが、テレワーク時に「コミュニケーションが円滑に進まない」と感じる大きな理由のひとつ。
例えば、業務で何か分からないことがあるとき、オフィスで働いている際は声を上げるだけで誰かがすぐに答えてくれる。チャットツールはオフィス内での立ち話のような近距離でのコミュニケーションを代替するものだが、オフィスで働いているときのように、チャットをすれば誰かがすぐにそれに応えてくれるかというと、そうとは限らない。
受け取る側からすれば、リアルな会話と違ってチャットの書き込みに「すぐ気がつかない」ことがある。チャットでのやり取りは、「すぐに返信できない場合がある」という点を改めて意識し、何かを聞くときは「そのうち返信があるだろう」というくらいの気持ちでいる方がよい。そのほうが焦らず仕事を進めていくことができる。
また、「作業に集中していて、すぐには返信できない」ケースもあるだろう。この場合、「少し待って欲しい」といった一言を返すようにしたい。相手も、メッセージを確認していることを把握でき、やきもきしながら待たなくて済む。このような、お互いが見えないからこその配慮が、コミュニケーションを円滑にするポイントだ。
(2)部下は分かりやすく、上司は素早くチャットせよ
チャットによる部下と上司のコミュニケーションではどうだろうか。例えば、部下が分からない点を上司に聞く際は、何が分からないかを整理して、読みやすくわかりやすい文章にまとめるという工夫をした方がよい。いくら、かしこまらなくてよいからと、五月雨式でとりとめのない話をしても、「何を言っているのか分からない」と思われ、送ったチャットの返信を後回しにされてしまう可能性がある。要点を冒頭に持っていき、自分が聞きたいことを整理してチャットを送らなければ、上司はあなたが抱えている問題をすぐには理解できないだろう。
一方、上司は部署のメンバーが何かを聞きたいと思ってチャットに書き込みをしていたら、率先して回答して、指導するべきだろう。テレワークの環境では、上司は自身が抱えている業務を可能な限り部下に割り振って、サポート役に徹するべきだ。オフィスで働いていたときのように、いつでも部下からの相談に応じられる上司をテレワークで実践することで、部下のコミュニケーションに対するストレスも緩和されるだろう。