──おっしゃっていることは凄くよくわかるのですが、それで実際にアーリーリタイアを実現させてしまうのがすごいです。
 節約生活とか、しんどくなりませんでしたか?

 穂高さん 「節約」というと我慢しないといけないイメージですが、私は「支出の最適化」と呼んで、経済行動に関して自身の価値観に合わせて取捨選択するという前向きかつ自然なものと捉えています。
 主に就職後、約7年半かけて資産を築いてきましたが、とくに中盤以降は、より明確にメリハリがついたと思います。給与の約8割を投資に回すイメージです。

 ──8割……!!!

 穂高さん はたから見たらストイックに聞こえるかもしれませんが、自分としては全然そんなことなくて。頑張って節約したのではなく、自分の価値観に合うものにしか資源を投下しなかっただけ、という感覚です。

 というのも、学生時代などは高級旅館に泊まったり、高価なレストランに行ったりしました。服もブランドものを買ってみたり(笑)。

 でも、実際に色々な贅沢に手を出してみたら「こんな感じか」と思ったんです。高価な服を着ても、ユニクロを着ても、そんなに変わらないなあと。高級レストランも良かったけれど、自宅で鶏胸肉を調理するのも美味しかった。一通り試してみたからこそ、自分が価値や幸福を感じられる対象がわかりました。

 ──たしかに、やりたいことを我慢するのは辛いけれど、なくても良いものを減らす分にはノーダメージですよね。逆に、どんなものにはお金を使っていましたか?

 穂高さん 経験になるものです。経験が増えると観点が増えます。観点が増えると人生は豊かになります。

 あとは健康面などです。たとえば食材です。添加物のなるべく少ないものを選んだり。健康な体があってこそのFIREだと思っているので、食品は多少高くても良いものを選んでいました。といっても、食材なら高くてもたかが知れています。外食と比べればずっと安いです。

 交際費もメリハリをつけて使っていました。たとえば私が通っていた中高は、自由で、特定の分野にめっぽう強かったり、良い意味で変わった人ばかりで、私の金銭的価値観も含め、個々人の主義を多様性の1つとして認められる土壌があります。心の底から尊敬できる友達が沢山います。関わる人々との交友関係は、今後も大切にしていきたいですね。

 趣味の登山にもよく行っていました。最初に道具をそろえてしまえば、あとは山までの交通費くらいです。アウトドアブランドの服もたまに購入しますが、長く使えて機能的なので、結果的にお財布にも優しくなります。

『テルヌア』の服取材当日も、スペインのアウトドアブランド『テルヌア』の服を着ていた穂高さん。「人とあまりかぶらない色が気に入っています」