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(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

 白人警官による丸腰黒人の殺害を契機に各地に拡大した「黒人の命は大切」運動を受けて、米国では警察の改革議論が盛んだ。法による警察の権限規制や、非犯罪案件への関与をコミュニティ団体へ委譲することなどに始まり、警察予算を削減して社会的サービスに振り向けることで、警察の介入による事態の暴力的なエスカレートを削減する案、さらには警察組織の解体という過激なアイデアまでが俎上に載せられている。

 こうした中、6月16日に警察改革をめぐる大統領令に署名した共和党のトランプ大統領は、「警察の予算を削減し、解体しようという過激な取り組みは支持しない」との立場を明確にしている。また、対抗馬である民主党のジョー・バイデン大統領候補も、「警察予算削減は支持しない」と明言した。

 しかし11月の大統領選を控えて、警察改革の錦の御旗は保守・リベラルともに支持する流行りのアジェンダだ。ただしその意味するところも多様である。「解体」「予算削減」とは、具体的にどのような内容なのか。実際に改革で先行する米都市での成功・失敗事例も挙げながら、警察に依存し過ぎるようになった社会のあり方そのものの変革の必要性が指摘される現状に迫る。