(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)
新型コロナウイルスの危機から立ち直りつつある中国で、今進められている新しい試みが「露店の解禁と成長支援」です。その背景にあるのは、コロナウイルス騒動による失業者対策と、大型商業施設の少ない地方での消費需要喚起です。さらに、それをデジタル企業の支援が後押ししています。現在の中国の実情を以下でお伝えしましょう。
姿を消した露店の解禁と支援が始まる
中国語の「地攤」は、路上販売、露店、屋台などを表す言葉です。かつて中国ではいたるところに露店や屋台があり、夜市(夜に開かれる屋台街)や定期市が開かれていました。
しかし1980年代からの改革開放による近代化が進むにつれて、多くの路上販売業者が姿を消していきました。都市の交通の妨げになる、品質の低い劣悪な商品を販売しているといったことが理由です。路上販売などを取り締まるために、「城管」という警備員が雇用されており、強引な取り締まりも問題になったことがありました。
このため観光地などを除くと、厳しく制限された露店ですが、2020年5月末から、鄭州、長沙、西安、大連、青島など多くの都市で解禁と支援が行われています。
この解禁には主に2つの目的があります。失業問題への対策と、小中規模都市での消費刺激です。
今回のコロナウイルス騒動によって、中国国内では多くの失業者が生まれました。工場の操業停止や社会の混乱による、経済の縮小の影響は巨大なものになっています。政府統計によると、都市人口の6%すなわち500万人が失業したとされていますが、実態はまだ明らかになっているとは言えません。
その失業対策として、露店を復活させようという政策がとられ始めたのです。李克強首相は5月28日の記者会見で、成都市では露店の解禁によって、10万人が就業可能となったと述べました。
李首相は、露天の解禁が関連産業全体の恩恵につながると山東省視察の際に予想しています。中国の各地の産業情報によると露天業および関連産業数は3000万人を超えるとみられています(中国の各種企業登録所へ登録している、露天業および関連産業数からの登録者数からの計算による)。