今求められる「経済の撤退戦」
出口戦略でこれらの破綻する地域や企業を救済するには、結果として公的資金の注入を行って、事実上、主要株主が日銀や政府系ファンドとなって早期に国有化して上場を目指したり、財政的に痛んだ自治体の再々編のみならず、国家や都道府県の直轄地として当面の経済危機が地方に住む人たちの生活にダイレクトに打撃がいかないよう手当てしていくほかない。いわば、コロナウイルスの拡大による経済自粛は日本の人口減少で経済的に自立できなくなった地方経済にとどめを刺しかねないのである。
与党はどちらかというと個人に対する10万円の拠出を二度、三度と続けていくことを念頭に経済対策を打とうとしているが、これらは一度当たり12兆円の費用が必要なものだ。しかも、直接これらの資金が経済を回してくれるわけではない。そうおいそれと何度も打てるものではないし、合理的で効率的な経済、社会を実現することには資さない。必要なことは需要の喚起と雇用の安定、そして合理的な規制・制度を前提とした効率的な国内経済の再構築である。コロナ経済を見据えたより合理的で、効果的な未来像とそれを実現するための政策立案であって、人口減少で地方経済の担い手が減っているところでいままでどおりの経済政策を全国画一的に続けている限りにおいては、効果的なコロナ対策の出口戦略が想定できないのも当然である。
この状況で痛みを伴う改革に打って出るのは極めて厳しい提言であることは間違いないが、このままでは本当に地方の企業倒産から地方金融の破綻、自治体の崩壊が進んでしまうことになる。そればかりか、農林水産業、とりわけ養殖産業のような設備投資が必要な産業や、観光業、さらには地方の医療機関やインフラを担う企業が危機に晒される。いま政治が必要とするのは「基本的に、コロナ前の経済に戻ることはない」という認識をきちんと踏まえたうえで、非合理な制度や仕組みを改め、非効率な企業はしっかりと清算させたうえで、大事な国家財政を拠出して緊縮することなく『経済の撤退戦』に踏み出すことではないだろうか。