重要なのはコロナ後にどういう日本を作るか

「コロナウイルス後」の経済、社会、政治がどうなっているのか分からないのだから、各国も置かれている状況によって取れる対策も方針も異なる。我が国の場合は、どういう理由か中国武漢からのウイルス第一波は潜り抜けたものの、感染力が強く変異した欧州株コロナウイルス蔓延の第二波に直面しているとみられる。我が国の感染症対策は、感染症拡大の起点となるクラスターを見つけてここを徹底的に封じて叩くという戦術で水際対策と共に感染拡大を遅滞させながら、外出自粛を求めて経済を犠牲に重症患者数と死者数を抑制し、今後期待される有効な薬剤やワクチンの開発を待つ、という方針である。

 しかしながら、このコロナ対策の方針は、日本より強権的な外出禁止令を伴う経済自粛を実施した諸国と同様に経済に深刻なダメージが起きる一方、いわゆる「アフターコロナ」「ビヨンドコロナ」などと呼ばれるコロナウイルス対応の経済、社会に対応するにはどうするのかという議論は残されたままになる。安倍官邸のコロナ対策を献策しているのは、あくまでも感染症の医師らが中心となった専門家会議。経済問題や社会変容の観点からは「日本が今後どのような社会をコロナ後に目指していくのか」という議論がなされないまま緊急事態宣言の延長が決められてしまったのである。

 もちろん、一連の緊急事態宣言による強い外出自粛は感染症拡大の抑止を目指したものであるから、感染症の専門家の助言を聞き、安倍政権がしっかりとした対応を打ち出すこと自体は問題ではない。しかしながら、活動自粛に伴う経済面でのダメージや、自宅にいる時間が長くなることで社会的な不安を惹起して自殺者が出てしまったり、精神的な不調から家庭内暴力に走る件数が増えたりすることは容易に想定しうる。これらの「アフターコロナ」のニューノーマルと言われる時代の幕開けに対して、政府に助言できる仕組みは乏しい。

 インフルエンザウイルスの大流行と比べて、コロナウイルスの死者がまだ低く抑えられているのは、中国・武漢でのウイルス流行と、その直後のイタリア、スペインでの感染拡大と死者急増を見て、各国が一斉に活動自粛・外出禁止を含む感染症対策を矢継ぎ早に実施したことによる。しかし、その感染症による死者は実数として見えるが、止まってしまった経済のおかげで未来を閉ざされた人たちや、自ら死を選んでしまった人たちを生むことになる。

 必然的に、コロナウイルス対策は「有効な薬剤やワクチンの開発が完了し行き渡るまで」の期間、ある程度のコロナウイルスとの共存と、感染抑止のための3密を防ぐ行動の確立とを念頭に置いて「経済を回しながら、コロナウイルスを拡大させないような生活・就業の在り方」を模索していかなければならないだろう。

 それは、いまもなお毎日通勤している人たちの移動を抑え、飲食店においても安全な距離感を保てる仕組みを持ちつつ、どうしても人が密集しがちな都市圏から、郊外へと定住者を増やしても就業可能な働き方、生活を実現していかなければならないだろう。インフラを担う働き手に感染のリスクが及ばないような就業環境の実現も含めて、現場に出なければならない人には現場なりの働き方が、テレワーク・リモートワークで問題ない人はなるだけ感染リスクの少ない郊外での暮らしが不利にならないような社会設計が求められていく。さらには、子どもの教育での有利不利をなくすことも含めて、結婚、出産、育児、就労、介護各方面で、コロナ時代の人生設計が可能となるような青写真を提案していくことが出口戦略を考えるうえでは必要になってくるだろう。

ゴールデンウイーク明けの出勤風景(写真:ロイター/アフロ)

コロナによる自治体破綻の現実味

 また、経済的に立ち行かなくなった地方経済の各産業、とりわけ金融セクターについては、抜本的な対策が必要になる。一次産業や観光業といった産業の担い手に強く依存してきた地方経済は、コロナウイルスによって打撃を受けたこれらの産業が集中的な倒産に見舞われる恐れが拭い去れない。

 何より、現行の緊急経済対策で提示されたプランでは、最大200万円という些少の額の給付に加えて、経済対策の定番である実質無利子・無担保の融資枠の設定、および雇っている人を解雇しないことで得られる雇用調整助成金ぐらいまでで救済策は打ち止めになりかねない状況だ。仮に第二次補正があるとしても、それまでの間、事業者は生き延びなければならない。主力となる無利子無担保での融資は、いずれ借り入れた資金を返済しなければならないので、将来収益をいかにこれらの産業が確保できるかが問われる。

 一方で、コロナ騒動があろうがなかろうが、そもそも地方経済においてはそのような「コロナ後も、借り入れた資金を順調に返済できることが分かっている」という経営状態が盤石で安定した事業者などそう多くはないのが現実である。良い借り手がいないからこそ地方の金融機関は貸出機会の減少に見舞われていたことを考えると、地方経済を支えてきたこれらの企業が力尽きて倒産ラッシュを引き起こした際に、これらに貸し込んできた地方金融機関も不良債権の激増により破綻を余儀なくされ、ペイオフが発生してしまう。

 このような「コロナ後の破綻のドミノ」は主に地方経済で深刻な状況に陥る可能性が否定できず、その先には金融機関だけでなく地方経済と密接に関係する地方自治体の破綻も想定しうる。経済が縮小するとき、真っ先にしわ寄せがいくのは地方・僻地と、弱者や外国人であることは論を俟たない。それゆえに、早期に地方自治体の再々編や地方金融機関の救済を行えるような政策を早期に立案しないと、本当に先に倒れてしまう自治体や金融機関が出かねない。「アフターコロナ」の経済の在り様について、単に「国庫を開いて苦しい国民を救済せよ」という応急策だけでなく、国有化や自治体再々編も含めた地方経済での雇用確保、ある種のニューディール的政策をコーディネートしなければならないだろう。