(北村 淳:軍事社会学者)
先週の火曜(4月28日)、アメリカ海軍第7艦隊ミサイル駆逐艦バリーが、南シナ海西沙諸島で中国側が領海と主張する海域を航行する「公海自由航行原則維持のための作戦(FONOP)」を実施した。翌29日には、同艦隊ミサイル巡洋艦バンカー・ヒルズが、FONOPとして、南沙諸島の中国人工島の1つであるガベン礁沖合12海里内海域(中国側の主張では中国の領海内ということになる)を航行した。
前回の本コラム「苦境の米艦隊を支援する豪州、我関せずの日本」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60342)で紹介したように、巡洋艦バンカー・ヒルズと駆逐艦バリーは、現在アメリカ海軍第7艦隊が南シナ海で作戦させることができる数少ない水上戦闘艦艇の虎の子である。これらの2隻によるFONOPは、南シナ海で優勢を占めている中国に対してアメリカ海軍が精一杯の牽制行動を展開していることを示している。
珍しく詳細な声明を発した米海軍
これまで米海軍当局は南シナ海でのFONOPに関しては公式にコメントをしない場合が多かった。たとえ実施したことを示唆しても、その詳細は中国側の非難声明によって推測される場合が多い。中国側の非難声明とは、たとえば「アメリカ海軍が中国の主権的海域である×××付近に軍艦を送り込んで挑発行為を実施した。中国海軍はただちに艦艇を派遣して米軍艦を追い払った。アメリカは、このような南シナ海の安全と平和を乱すような軍事的挑発は繰り返すべきではない」といったような声明である。
しかしながら先週のFONOPに関しては、第7艦隊司令部によって詳細な公式声明が発せられた。