(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)
現在、世の中の関心は、新型コロナウイルスをどう克服するか、いつこの騒動が収束するのか、補償や景気刺激策などコロナに伴う経済対策をどうするか、ということに集中しています。テレビをつけてもネットを見てもコロナ、コロナ。平時であれば大ニュースの金正恩重病説や油価の大暴落すら霞んで見えます。それほどこのコロナ問題はわれわれにとって重い問題を突き付けていると言えます。
戦後”最悪”の危機
先日、経産省時代の先輩(現国会議員)と意見交換する機会がありました。その先輩曰く「このコロナ問題は自分の役所人生を振り返ってみても最も深刻な事態だ」というのです。
先輩によれば、バブルの崩壊とその後の金融機関の相次ぐ経営破たん、9.11(対米同時多発テロ)からのイラク戦争、サブプライムローン危機やリーマンショック、それから東日本大震災など、これまでにさまざまな「危機」を経験し、その対応に当たってきた身からしても、今回のコロナ危機は間違いなく、最も過酷なものになるのではないかというのです。
なぜコロナ危機は“最悪”なのか。そこには過去の危機にはなかった3つの特徴があるからです。
1つ目は、世界同時ということです。例えばリーマンショックの時には、中国が受けたショックは、欧米や日本ほどではありませんでした。そのため中国政府は、このタイミングで巨額の財政出動を行い莫大な需要を生み出し、落ち込んだ世界経済のけん引役を果たしてくれたのです。日本も中国向けにせっせと輸出をし、大いに助けられました。言ってみれば、リーマンショックの時にはまだ中国という突破口があったのです。5月下旬にようやく延期されていた全人代(全国人民代表大会。中国の国会)が2カ月半遅れで開かれるようですが、今のところ、リーマンショック時のような大掛かりな財政出動等は見られません。
そして今回は、中国のみならず、ヨーロッパもアメリカも日本もシンガポール等の他のアジア諸国も、ほぼ同じようなタイミングで、大きな危機に直面し(もしくは、危機を防ぐために各種活動を止めていて)、経済活動が急速にシュリンクしています。ここまでの世界同時性というのは、ここしばらくの過去の危機ではなかったことです。これは非常に深刻な事態と言えます。今回の危機が第二次世界大戦以来、1929年の世界大恐慌以来、などと言われる所以です。