アパート経営

 宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、現物不動産投資に関する実用的なアドバイスをお届けします。

その提案は「ハウスメーカーの思惑」では?

 世界経済非常事態宣言! ヒト・モノの動きが突如として断絶し需要と供給が麻痺状態、特に需要が「蒸発」したのには参りました。人の動きが止まれば、こんな状況に陥ってしまうのか……。

 1995年のアメリカ映画でダスティン・ホフマンが演じた「アウトブレイク」の映像が、まさに現実世界で起きているのです。企業や家計のダメージは計り知れませんが、良かったのは東京オリンピックの開催問題が「延期」で落ち着いたこと。中止という最悪のシナリオは回避されたことで、少しは落ち着くことができました。さて、今後どうなることやら。
 経済が停滞するのは仕方ないことですが、問題は終息日。新型コロナウイルスの治療薬や予防薬、ワクチンなどが開発されれば、穏やかにでも患者の減少となり、期待感も出るでしょう。こんな時だからこそ、私は株式などを断固買い進めていきます。日本経済の上昇のためにも……。

 さて、今回は前回に引き続き、あまり経済動向に左右されない底堅い現物資産である「不動産投資」の考え方に力点をおいて、話を進めていきます。

【質問】
 ハウスメーカーより、「いい土地があるから2、3棟目のアパートを建てませんか?」と話があるっちゃけど、どうじゃろか? 1棟目も同じハウスメーカーで建てて、安心もあるしね!

 この相談は、6年前実際にお客様から受けたものです。
 相談者はすでに一棟のアパート(ファミリー型)を所有しています。借金は定年退職時に一括返済したので、ありません。「今度は新たな土地を紹介しますから、複数物件のアパートオーナーになりましょう」と持ち掛けられた話です。

 相談者はすでに70歳を超えています。所有中のアパートも自宅から約2時間かかる距離にあり、管理も自身で行っています。持ち掛けられた複数物件も自宅から同じくらいの別方向距離にあるもので、しかも高額な借金にもなります。両方とも宮崎県内の物件ですが、遠距離なので管理は困難になることでしょう。
 この相談で一番の問題点は、「全てハウスメーカーの意向に沿って行われている(コントロールされている)」ということです。当時の相談者の年齢が70歳、そこに多額の借金。もちろん、現時点の担保と連帯保証人、借入の親子リレーも考えなくてはいけません。売主(ハウスメーカー)と銀行の思う通りではいけません。

 ここで「リスクのコントロール」の話をしたいと思います。前回、住宅にかかるお金の一部を、老後資金に回してあげましょうという話をしました。この場合はどうでしょう。「意味のない老後の借金地獄」の典型的なものです。見た目の話(30年間家賃保証収入有りの前提)だけ聞いて、30年間の借金返済、アパートの修繕、家賃下落というリスクを自身でコントロールできていないのです。
 返済が終わるのは30年後です。ご自身の家計管理や、やがて物件を受け継ぐことになるご家族のことを、どれだけ真剣に考えているのでしょうか? 明確な目的もなく、保証を後の人に託すのは無責任だと思うのですがどうでしょう。

 「節税ができる」「将来の年金代わりに」「生命保険の代わりに」など口車に乗ってしまった。これは避けなければなりません。投資ですから、そんなにいい話があるわけありません。他の業者の見積りなど、投資する前にやっておくべきことがたくさんあります。

福岡2棟目の購入を決める際には、物件の良し悪しをしっかりと検討するのはもちろん、投資する目的や先々のことも考えておきたい(写真は福岡市中心部)