新型コロナウイルスが猛威を振るうインドネシアのある病院では、新生児を感染から守るために、フェイスシールドを装着していた(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、実質的な「都市封鎖」ともいえる「大規模社会制限(PSBB)」が自治体レベルで行われるなど、内閣、政府、各自治体が一丸となって対策に乗り出しているインドネシアで、今新たな社会問題が浮上している。

 世界保健機構(WHO)は、「密閉空間」で「密集場所」で「密接場面」という「3密」の典型であり、コロナ感染の爆発的拡大のリスクが極めて高い施設として、「刑務所」や「拘置施設」をあげ、各国に適切な対応を呼びかけている。

 インドネシア政府、法務人権省も、こうした呼びかけに応じ、これまでに全国の刑務所から服役囚約3万6000人を釈放する措置に踏み切っている。

 釈放の対象は、軽犯罪や経済犯での服役囚や模範囚、刑期の大半を終えているなどの条件に合致した服役囚が中心。逆に釈放の対象となっていないのが、凶悪犯罪や麻薬犯罪、テロ犯罪などの犯罪者、それから「汚職」で服役中の汚職犯罪者たちである。

 そうした中、ヤソナ・ラオリ法務人権相が4月1日、「汚職犯服役囚も釈放の対象とする」との考えを示して波紋を呼んだ。これに対してジョコ・ウィドド大統領は即座に「そんなことは聞いてもいない」と不快感を示す事態に発展。閣内の不統一なのか法務人権相の独断専行なのか、混乱が生じた形となった。

再燃する汚職服役囚の釈放問題

 ジョコ・ウィドド大統領による一刀両断の否定でこの汚職服役囚の釈放問題は決着がついたはずだった。ところがインドネシア全土でのコロナ感染拡大が一向に収まらないことから、この問題が再燃し始めているのだ。

 ヤソナ・ラオリ法務人権相は国会の委員会で「麻薬犯、汚職犯の早期釈放の禁止」を決めている2012年制定の99号政令を改正する姿勢を見せ始めている。