マスクを着用して韓国・ソウルの桜並木の近くで自撮りする親子(資料写真、2020年4月3日、写真:ロイター/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 4月最初の土曜日、花見のドライブに行ってきた。新型コロナ騒ぎも、何のそのである。

 桜が八分咲きの週末が晴天に恵まれた。おとなしく家にいたいと思う人など、どれだけいるだろうか。もともとじっとしていられない我が家は、少し早めに家を出て、午後の4時には家に戻ってきたが、帰路についたときには反対車線が大渋滞だった。

 韓国の桜は日本のソメイヨシノとよく似ている品種のため、ほぼ同時に咲く連翹(レンギョウ)の鮮やかな黄色と対照をなす。それが韓国の春の彩で、例年それを求めて猫も杓子も花見に出かける。

桜のトンネルを散策せずに、車内から花見

 だが、今年の花見はちょっと違っていた。ソウル市内の桜の名所では、花見客で例年溢れかえるために、閉鎖されているところもある。私の家から4キロほどのところにもそうした名所があって、つい先日、百済時代の古墳に関する取材のついでにそこを通ったのだが、やはり閉鎖されていた。つまりソウル市内での花見は期待できない。

 今日の花見のドライブでも、その影響が感じられた。ソウルから東へ車で1時間圏内というところ。日本植民地時代に作られたダム湖を越え、北漢江が300メートルほどの川幅で、山あいの広い谷間を悠々と流れている。その東側の斜面を通る道路は、延々と桜並木になっている。春のこの時期、この道を車で飛ばす者などいない。が、今年は驚くほどにのろのろ運転だった。なるほど、車も例年よりも多いではないか。ソウルで見られないのなら、ここで見ようという魂胆なのだ。