私は普段、中国をウォッチしている者だが、この頃、中国人の若手の優秀な経済学者たちが、欧米での留学を終えた後、中国に帰国せずにそのまま欧米で大学教授などになっていくケースが増えている。社会主義国の中国にいると発言しにくいことでも、欧米に身を置いていると、比較的自由に発言できる。加えて、彼らは欧米社会と中国社会の両方に熟知しているので、世界経済・金融の分析に厚みがあるのだ。

 そんな中で、私が発言に注目している一人が、ロンドン経済学院の金刻羽(ジン・クーユイ)教授である。彼女は今年38歳だが、2年前のダボス会議で、スティーブ・ムニューチン財務長官やクリスティーヌ・ラガルドIMF(国際通貨基金)専務理事らと、通貨政策を巡って激しい論戦を戦わせて、話題を呼んだ。

深刻さはリーマン・ショックの10倍

 その金刻羽教授がロンドン時間の3月22日夜、「微博」(中国版ツイッター)に、そら恐ろしい「予言」を綴ったのだ。タイトルは、「全世界がおそらく1931年の時のような経済恐慌に直面する。それは2008年の危機の再来ではない!」。長い文章ではないので、以下全訳する。

1、われわれが直面しているのは、おそらくは世界大恐慌であって、単なる経済の衰退ではない。つまり、(世界恐慌の)1931年の状況であって、(リーマン・ショック後の)2009年の状況ではないということだ。この後やって来るのは、国家の生産の40%の喪失であって、5%の喪失ではない。

2、これは、1回の金融危機が実体経済にもたらす圧力の状況ではない。そうではなくて、ウイルスが直接、実体経済に影響をもたらすものだ。もっと言えば、金融システムが崩壊する状況が起こってくる。いまこそ各国政府は、持てる力をすべて出すべき時だ。いま国庫のありったけの資金を使わなければ、今後は使うべき時はやって来ないだろう。

3、危機と恐慌の違いはとても大きい。クライシスとデプレッションの違いだ。GDPの5%を失うものと、50%を失うものの違いだ。私見では、今回の状況の深刻さはおそらく、(リーマン・ショック時の)2008年の10倍程度の規模になるだろう。

 以上である。彼女は、まさに海岸線で遠望しながら、「津波がやって来るぞ!」と叫んでいるのである。