事例2 買った株が上昇すると、すぐに売却する(売却益が少ない)

 株価の上昇により満足感を得て、売却して利益を出すことにより安心感を得ようとしがちです。また利益の大きさよりも利益が出ているかどうかを気にします。これは、将来の不確実な利益よりも、確実な目先の利益を得ようとするものです。

買った株が上昇すると、すぐに売却する

[対応]:企業の本質価値を評価して、今後も成長が見込まれる株は保有しましょう。利益が出るとすぐ売るのは、企業の評価ができていないためです。

事例3 株価が下落を続け、売却できず塩漬けに

 投資した企業の株式が何らかの事情によって値下がりし、株価が下落を続けている場合には注意が必要です。その内容を検討もせずに放っておくと、値下がりした株式を売却できないまま保有せざるを得ない事態になります。

株価が下落を続け、売却できず塩漬けに

 これはよくある塩漬けのケースです。値下がりした株式を売却すると損が実現します。その損が実現すると自分の行動が否定されるような気になり、その株式を売却できなくなります。このため、その企業の評価を変えます。例えば、その企業が構造的な問題を抱えているにもかかわらず、現実の株価の下落は一時的な現象であり、いつかは上昇するだろうという解釈をして、考え方の矛盾を解決しようとするものです。

[対応]:保有銘柄に悪いニュースが流れた場合は、そのニュースを良く判断しましょう。その上で、そのニュースが一時的な内容であれば、そのまま保有しましょう。一方、投資企業が「構造的な問題の場合」を抱えている場合は、売却しましょう。例えば、その会社の強みがなくなってしまう場合には売却しましょう。

安定成長企業の長期投資のすすめ

 ミスターマーケットはとても気まぐれです。また、株式市場は時には全体で同じ動きをします。このため何か大きなニュースをきっかけに市場全体の株価が下がることがあります。例えば、昨年、米中貿易戦争のニュースが伝わると、ほとんどの株価が下落しました。しかし、実際には企業業績に影響を受けない企業の株式までもが大きく下落しているのです。

 下の図は、食料品に分類されるある企業の1株利益と株価の推移を示したものです。株式市場は、短期的には人気投票ですが、長期的には企業の価値を正しく図る計量器の役割を果たします。長期的に見ると、株式の価格とその価値は等しくなっていきます。安定成長企業には特にその特徴が見られます。

ある食料品企業の1株利益と株価の推移
ある食料品企業の1株利益と株価の推移

 ミスターマーケットは、景気や市場の動向にはとても敏感で過剰に反応しがちです。一方、中国とアメリカで貿易戦争が起きても、イギリスがEUを離脱しても、私たちの日常生活は変わりません。

 図のような企業は、業績が安定して成長しています。株価にばかり注目していると、投資の本質を見誤ります。株価の動きよりも、企業業績の動向に目を向けましょう。ミスターマーケットに翻弄されてはいけません。むしろ企業の評価を適切に行っていれば、こうした下落時は買付けのチャンスです。安定成長企業で堅実投資を行いましょう。

 次回は、株式投資のリスクについて説明したいと思います。

 第14回 アメリカの投資教育と株式投資の質問