2019年5月21日付、本紙記事「安楽死反対のフランスで始まる『ソフトな安楽死』」において、2019年4月16日にドイツ連邦憲法裁判所で「安楽死の権利を求めて」の裁判が始まった旨、紹介した。
ドイツでは、2015年に「ビジネスとして介助自殺を行うことを禁止した」法律、刑法217条が成立していた。ところが、治癒不可能な肺の病気を患い、窒息しながら死ぬのを恐れて介助自殺団体の援助で死ぬことを希望していたヘルムート・フェルトマン(Helmut Feldmann)氏(73歳)は、この新法により死ぬ機会を奪われたとして、憲法裁判所に提訴していた。その裁判がこの2月26日に結審し、判決が下りたので、それについて報告する。
憲法で規定される人格権には「死ぬことを自己決定する権利」含まれる
<判決内容>
a)ドイツ基本法(憲法のこと)2条1項で謳われている人格権には、自律の表明としての、死ぬことを自己決定する権利が含まれる。
b)死を自己決定する権利には、自分の命を奪う自由が含まれる。生活の質と自分の存在の意味を理解した上で、人生を終わらせるという個人の決定は、自律的な自己決定の行為として国家と社会によって尊重されなければならない。
c)自分の命を奪う自由には、第三者に援助を求め、援助が提供される場所で援助を求める自由も含まれる。
d)刑法第217条(1)でビジネスとしての自殺援助を禁止したことは、自殺を求める人々の自由の行使を制限している。
e)誰にも自殺援助をする義務はない。
以上のように、<誰にも自己決定による死の権利がある>、<2015年成立の刑法217条の『ビジネスとしての介助自殺の禁止』は、ドイツの「基本法」に謳われている基本権に反する>という判決内容だった。
しかも、この判決は、重病の人だけでなくて、誰もが死の援助の手立てを持っている人に介助を要求する権利があるという、従来の介助自殺の規定よりさらに一歩踏み込んだものだった。