(PanAsiaNews:大塚 智彦)
インドネシアのナディム・マカリム教育文化相は2月19日、国会第5委員会で東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の共通言語としてインドネシア語の採用を推進していく方針を明らかにした。ASEAN加盟国10カ国の中でインドネシア語に近いマレー語を使っているマレーシアやブルネイはあるものの、英語が広く使われているシンガポールやフィリピン、さらに独自の言語体系や文字を持つタイやミャンマー、ベトナムなど多様な言語文化を背景にもつ国がASEANには多い。
それだけに共通言語構想は域内各国のコミュニケーションの効率化などからその必要性がかねてから指摘されていたことは事実だが、国際共通語でもある英語ではなくインドネシア語を目指すというインドネシアの姿勢には今後激しい反対論も予想され、インドネシア語の共通言語化の道はかなり厳しいとの見方が有力だ。
ASEANは経済活動の効率化などからかつては統一時間帯構想も真剣に検討された経緯があり、さらにインドネシ国内に存在する3つの時間帯の一元化も実現間近まで至ったものの、いずれも実現とはなっていない。
こうした言葉や時間帯の統一を提唱する背景にはASEAN加盟国内での主導権争いや指導力強化による域内結束強化という政治的側面もあるとされており、新しくて古いこの手の議論の再燃に警戒心が高まることも予想される事態となっている。
使用者数では断トツのインドネシア語系
ナディム教育文化相は国会委員会の席で「今後インドネシア語をASEAN域内の共通語にすることに向けた研究を進めたい」として国立言語開発育成研究センターを中心にしてASEAN各国の言語との間で専門用語などの共通化を図ることで近い将来にASEAN共通語としての地位を固めたいとの意向を示した。
専門用語の共通化は特に経済分野では今後のビジネス環境整備、ビジネス促進からの有効であるとしているが、さらに文化や言語学などの分野でも「各国の言語、文化を尊重しながら段階を踏んで進めたい」としている。
今後の構想についてナディム教育文化相は「特に目標とする期限は設けずにいきたい」と述べるにとどまっている。