2月10日、訪問先オーストラリアの議会で演説するインドネシアのジョコ・ウィドド大統領。このオーストラリア訪問中に、人権団体から”直訴”を受けた(写真:AP/アフロ)

 (PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシアの東端、パプアニューギニア島の西半分を占めるインドネシア領パプア州での騒乱は現在も継続中だ。増派された軍、警察などの治安部隊と、独立武装組織「自由パプア運動(OPM)」や軍が一方的にその存在を主張する「武装犯罪者集団(KKB)」などとの武力衝突が続いているのだ。

 その騒乱は今後、もしかすると一段と悪化するかも知れない。ある象徴的な事件が起きたからだ。

治安部隊が銃殺したのは12歳の男の子

 2月20日、パプア州インタンジャヤ県ガルンガマ村で、軍・警察部隊と地元民の間で銃撃戦が発生、その後、軍兵士が現場で2人の男性の遺体と女性2人の負傷者を発見した。これが事態悪化のきっかけとなりかねない事件となった。というのも、遺体となって発見された一人が、小学生の男の子であるということが判明したからだ。

 射殺されていたのはメルキ・ティパガウ君(12)とカユス・サニ氏(51)の2人であることを、2人の出身であるモニス族地区を統括するキリスト教のユスティン・ラハンギア神父が米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」系のメディア「ブナ―ル・ニュース」に明らかにした。

 メルキ君の遺体が安置されている自宅を訪問したユスティン神父によると、メルキ君は小柄だが、小学校6年生の12歳であると確認。「彼は小学校6年生である。自分の教区の信者であり間違いない」と証言。メルキ君が通う小学校の校長も「6年生に在籍している」と確認し、ブナ―ル・ニュースが独自に確認した生徒名簿にはメルキ君は「2008年2月14日生まれ」、つまり12歳であることが明記されているという。

 ところが銃撃戦でメルキ君を射殺した軍は、「彼は18歳で独立武装組織OPMのメンバーであり、武器を所持していた」と発表、射殺の正当性を主張するという事態になっている。