新卒および中途採用における人材不足

 人手不足は採用難につながる。とりわけ問題視されているのが大学新卒者の“採りづらさ”だ。HR総研が実施した『新卒採用動向調査』(※6)によると、2019年卒を計画通り採用できた企業は、わずかに3割以下。2020年卒に関する同調査(※7)では、実に3分の1の企業が2019年6月後半時点での内定充足率(採用計画数に対する有効な内定者数の割合)を「20%未満」と回答している。中小企業に限れば、内定充足率「20%未満」が46%と半数近くになり、「0%(内定者ゼロ)」という企業が32%に達する。時期を鑑みてもかなり深刻な状況だ。

 前述の通り、2019年大学卒の就職者数は44.7万人。リクルートワークス研究所が実施した『ワークス大卒求人倍率調査』(※8)でも、2019年卒の民間企業就職希望者数は43.2万人、2020年卒は44万人と近い数字が出ている。いっぽう民間企業の求人総数は、2019年卒が81.4万人、2020年卒は80.5万人。つまり求人に対して36~38万人も人材が不足している計算だ。これでは採用難が続くのも無理はない。

『ワークス大卒求人倍率調査』では、民間企業の求人総数が減少した背景には「中小企業が新卒の求人総数を縮小し中途採用を拡大した」ことがあると分析している。『マイナビ 人材ニーズ調査』(※9)でも、2019年度の採用において最も高い割合で実施されたのは「中途採用(77.3%)」で、2020年度の採用予定に関しても「中途採用(81.1%)」が最多というデータが出ている。あまりの人手不足・採用難ゆえに、“新卒学生の奪い合い”から降りる企業も現れ始めているわけである。

 たとえ企業が中途採用に力を入れるようになっても、そう簡単に人手を確保することはできない。厚生労働省の『職業安定業務統計』(※10)によると、リーマンショックによって2009年には0.47倍まで下落した求人倍率が、2018年は1.61倍、2019年は1.60倍。わずか10年で高度成長期並みの水準にまで急上昇したのだ。

 当然、必要な人数を採用できない企業が増える。前出の厚生労働省『雇用動向調査』によると、2019年6月末現在の未充足求人数(仕事に従事する人を補充するために行っている求人。事業所における欠員数とも言える)は約138万人。新卒学生の38万人不足よりもさらに酷い。中途採用市場もまた採用難に陥っているのである。

 厚生労働省職業安定局の『人手不足の現状把握について』では、34歳以下の若い世代を「離職率も高く、転職等を通じた適職選択過程にある」、35-59歳世代を「人手不足産業の中小企業ほど積極的に採用している。ただし、離職率も同様に高いため、人材の確保(人材流入)にはつながっていない」とし、人手不足産業の中小企業は「60歳以上の層に労働力を頼っている」とまとめている。が、シルバー人材の確保も今後厳しくなるであろう点は前述の通り。全世代に渡る人手不足は、まだまだ続きそうである。

HR総研:「2019年&2020年新卒採用動向調査」結果報告
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=228

HR総研:「2020年&2021年新卒採用動向調査(6月)」結果報告
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=234

第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/2019/0424_18353.html

「マイナビ 人材ニーズ調査」2020年01月
https://www.mynavi.jp/news/2020/01/post_22307.html

厚生労働省 職業安定業務統計
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1b.html

厚生労働省 雇用政策研究会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuan_128950.html

職業安定局『人手不足の現状把握について』(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/20141111-3_1.pdf