(文:横田増生)
ドナルド・トランプ大統領の2020年最初の支持者集会が、オハイオ州北西部にある工業都市トレドで開かれた。
1月9日の集会に出発したのは前日の午後2時すぎ。気温は1℃。私の住むアパートからトレドに到着するまで、2時間ほどかかる。
トレドは、中西部のいわゆる「ラストベルト」に位置し、激戦州オハイオの工業地帯の一角を占める。
街に近づくと、工場の煙突から炎と煙が上がっているのが目に入ってくる。集会が開かれるダウンタウンにある「ハンチントンセンター」の周りは、人通りも少なく、さびれた感じが漂う。
1964年以降の大統領選挙では、オハイオ州を制した候補者が大統領になっている。2016年の選挙でも、ここオハイオで、2012年の現職バラク・オバマ大統領を再選に導いた支持から熱狂的なトランプ支持に変わったことが、最終的な選挙結果に大きく影響した。
私はいったんホテルに荷物を置いて、地元のホッケーチームがホームグラウンドとするハンチントンセンターまで車を走らせた。夜を徹して集会を待つ人たちがいると聞いていたからだ。センターの収容人数は8000人。
到着したのは午後6時すぎ。
ハンチントンセンターの周りには、すでに、警備のための警察車両や、マスコミのカメラなどが集まっているのが見える。
勝手連としてトランプを応援
その中でもひときわ目立つのは、会場の真ん前の駐車場にピックアップトラックを停め、その後ろに、橋状の物体を載せたトレーラーを積んで、大音量で『YMCA』のメロディーにトランプ支持の歌詞を載せた音楽をかける男性だ。
何をやっているんですか?
と、思わず声をかけずにはいられなかった。
男性は、ロブ・コーティス(54)。映画のPR会社を引退して、2016年から、勝手連としてトランプを応援しているのだという。
「住んでいるのは(ミシガン州の)デトロイト郊外だよ。そこから、このトラックで、ハワイとアラスカ以外の48州全部を回り、トランプを応援しているんだ」
――なぜそんなことをしているのか。
「トランプの前向きなメッセージを伝えて、アメリカを勇気づけようとしているんだよ。アメリカから“フェイクニュース“を蹴散らさないといけないからね。トランプの家族を大切にする価値観が大好きなんだ。運動資金は支援者からの寄付だね。10万ドル(約1100万円)以上が寄付で集まったし、自分自身のお金も使っている。いくら自分のお金を使ったかって? たくさんだよ、たくさん」
◎新潮社フォーサイトの関連記事
・【特別連載】米大統領選「突撃潜入」現地レポート(3) トランプ支持者集会の異様な熱気(下)
・【特別連載】米大統領選「突撃潜入」現地レポート(1) 「アイオワ州党員集会」直前「民主党」注目5人
・「サンダース旋風」は再び起こるか