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 かつては江戸時代の経済事情について、「低成長で、農民が領主に搾取された時代」といった歴史観が私たちの間で共有されていました。

 その遠因は、第二次世界大戦での敗戦にありました。日本が戦争に負けたのは、民主主義国ではなく、欧米と比較して封建的だったからであり、その原因を遡れば江戸時代に鎖国をして開明的になれなかったからだ、という考えが戦後、一般に広がったのです。

 しかし現在では、江戸時代にもそれなりの経済成長があったことがわかっています。そもそも産業革命を迎えたヨーロッパがそれ以降、急激に成長したということであって、ヨーロッパと比べれば日本の経済成長率は相対的に低かったかもしれませんが、足下を見れば十分な成長を実現していたと考えるべきなのです。

 では、江戸時代の経済成長とは、いったいどういうものだったのでしょうか。

戦乱がなくなり官僚化した武士たち

 戦国時代は全国で多数の戦いが繰り広げられてきました。しかし江戸幕府が開かれると一転、日本は戦乱のない時代に入ります。さらには、国を閉じる「鎖国」を選びました。