大坂城 撮影/西股総生

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

石垣のパターンは6種類 

 城に興味を持ち始めて最初のうちは、石垣はどれも同じに見えるかもしれません。でも、よく見ると石垣にはいろいろなタイプがあります。石垣の違いと、違いを生み出す原理とがわかるようになると、城造りにおけるイノベーションが見えてきます。

 まず、採ってきた石を、そのまま積み上げたものを「野面(のづら)積み」といいます。次に、採ってきた石の表面や、合わせ目になる所を打ち欠いて、ある程度形を整えてから積んだものが「打込みハギ」。さらに、ブロックのように形を四角く整えて積み上げたものを「切込みハギ」と呼びます。かなり整然とした印象になりますね。

 それから、大小の石をランダムに積むやり方を「乱(らん)積み」。段ごとに石のサイズをそろえて、横に目地が通るようにしたものを「布(ぬの)積み」と呼びます。これに、先ほどの野面積み・打込みハギ・切込みハギを組み合わせると、6つのパターンができますね。なので、城を歩きながら「これは野面積みで乱積み」「お、打込みハギの布積みだな」などと当てはめてゆくと、知的パズルが楽しめます。

写真1:野面積み・乱積み。岡山城。一見、乱雑そうだが、石の奥行きを大きくとって奥の方でガッチリかみ合わさっているので、簡単には崩れない。 撮影/西股総生
写真2:打込みハギ・乱積み。姫路城(兵庫県)。石を打ち欠いて表面を平らに揃えている。 撮影/西股総生
写真3:打込みハギ・布積み。大坂城。目地が横に通っているのがわかる。石のサイズが揃わないと、こうはならない。 撮影/西股総生
写真4:切込みハギ・布積み。二条城(京都府)。石をブロックのように整形して、隙間なく積み上げている。加工に手間をかけているのが一目瞭然。 撮影/西股総生