昨年12月24日、中国・成都で開かれた日中韓首脳会談での文在寅・韓国大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)

 韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の念願だった「公捜処法」が昨年の12月30日、ついに国会を通過した。これで、韓国憲法のどこにも存在根拠のなかった「公捜処(高級公職者不正捜査処)」が設置されるための法案が作られ、文在寅大統領は、政権末期の権力弛緩を防御することができる強力な司法機関を手に入れることとなった。

新設の「公捜処」は政権べったりの捜査機関に

 公捜処法は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代から推進してきた韓国の左派政権が目指してきた司法改革の核心だ。盧武鉉大統領の後継者を自任する文在寅大統領は、大統領候補者時代から「司法改革」を「1号公約」に掲げてきた。その具体的な中身は、検察の権限だった高位公職員に対する捜査を専担する公捜処の新設と、検察の権力を警察と分ける検・警捜査権調整案だった。現在、捜査権と起訴権を独占している韓国検察に対する牽制装置を作り、政権と癒着して助っ人の役割を果たす検察組織の弊害を防ぐというのが同法の意義だ。

 しかし、2019年の暮れに韓国国会を通過した公捜処法の内容を吟味すると、新設される公捜処はむしろ政権に掌握される司法組織に転落する恐れが非常に高い、というのが韓国の保守系メディアの分析だ。