(加谷 珪一:経済評論家)
筆者は毎年、年末年始のコラムにおいて新年の経済展望を執筆している。今年(2019年)は順風満帆とはいかないと予想したが、ほぼ予想通りの展開となった。国内の消費が引き続き低迷しており、企業業績もそろそろ頭打ちとなりつつある。幸いにも米中が決裂するという最悪の事態は回避できているが、状況は予断を許さない。2020年は賃金が低下する可能性が高く、オリンピック特需も完全に消滅することから、状況はさらに不透明になるだろう。
賃金の低下傾向がさらに鮮明に
2019年の実質GDP(国内総生産)成長率は、1~3月期がプラス0.4%、4~6月期がプラス0.4%、7~9月期はプラス0.1%だった。今年の後半から再び物価の上昇率が鈍化しており、実質と名目の差分が小さくなっている。10月には消費増税が実施されたが、10月の小売業販売額は前年同月比7.1%減となっており、前回増税の2014年4月の4.3%減を上回る落ち込みを記録した。
ちなみに増税直前の9月は駆け込み需要で9.2%増、前回増税時の直前は11%増だった。前回は消費増税の前後で11%増と4.3%減、今回は9.2%増と7.1%減なので、今回の方が影響が大きい。10~12月期のGDPは良い数字にはならないだろう。
米中貿易戦争と中国景気失速の影響がジワジワと押し寄せており、1~3月期と7~9月期は輸出がマイナスだった。公共事業などが増えているので2019年は何とか帳尻が合ったが、2020年の3月期の企業業績は悪化する可能性が高い。これが賃金に響くようだと、来年の消費は厳しい展開が予想される。
賃金についてはすでに気になる兆候が出ている。
2018年までは名目賃金が上昇していたものの、それ以上に物価上昇が大きく、これが実質賃金を引き下げていた。ところが2019年については、名目賃金がマイナスになる月が増えており、本当に給料が減っている。これは今までになかった傾向といってよいだろう。