パート・アルバイトの採用対策
パート・アルバイトの採用と聞くと真っ先に思い浮かぶのが「求人票を出すこと」だが、ハローワークに出したところであまり反応がないという声をよく聞く。そこで経費がかかる求人サイトや広告などに掲載するのだが、それでも同様だという。求職者はいったい何を見て応募をするのだろうか。
近年では店舗型の職場であれば、店内に貼られるポスターやSNSを見て応募するケースが多く、求人サイトにあがる無数の情報の中から「わざわざ探す」ということをしない人が増えてきている。
また、本人の希望を無視してシフトを組む、長時間労働やノルマを課す、残業代の不払いがあるなど、いわゆる「ブラックバイト」の事例がマスメディアに取り上げられたことから、求人票を見ただけでは実態はわからないと思っている求職者も多いようだ。
アルバイト採用においては、職場そのものが最も大事なリクルーティングメディアであり、外食や小売などの一般消費者が顧客となる店舗では、半数が下見に来てから応募を決めているという。つまり、求職者はマスメディアに載る情報よりも自分の目を信頼しているのである。
次に、条件面についてはどうであろうか。総務省統計局の2018年度「労働力調査」によると、非正規の仕事に就いた理由は、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く、割合もほぼ等しく約3割。
では、応募者が求める条件を、「学生」と「主婦層」に分けて見ていこう。
<学生>
学生がアルバイト選びに重視するポイントとして「時給が高いこと」や「生活時間に合わせて働けること」がある。授業が終わった後の18時~21時の時間帯を希望する人が多く、曜日によっては日中も働きたいというケースが多い。勤務時間の長さとしては、3~5時間に集中しており、学業やサークル活動を優先して空いた時間に働きたいというニーズがある。
また、アルバイト選びの決定要因としては「知人・友人にすすめられて」、「同世代の人が働いていそうだった」と答える学生が多く、同世代の仲間とのつながりを大事にしていることも特徴といえる。
<主婦>
主婦層が最も重視するポイントは「生活時間に合わせて働けること」で、家事や育児に支障のない範囲内の時間で働ける場所を求めている。時間帯としては午前中~15時に希望が集中しており、子育てや家事との両立を中心に考えていることがうかがわれる。
拘束時間の希望は4~5時間がほとんどで、長い時間でシフトを組むのではなく、仕事を細かく分けていく工夫が必要だろう。
また、職場選びの決定要因としては「職場が自宅から近いこと」が高くなっており、できるだけ近いエリアで、家庭生活との両立を図りながら働きたいというニーズが読み取れる。
学生と主婦の両者が共通してあげた「生活時間に合わせて働けること」に加え、「働いている人の雰囲気がよいこと」が重視されるようだ。この傾向は年々強まっており、特に若年層に顕著に見られる。つまり、パート・アルバイトの確保が難しくなっている昨今、注目すべきは「人づて採用」である。
職場のスタッフを介して知人や友人を紹介してもらって採用する雇用方法は、正社員の領域でも注目されている。なかには紹介してくれたスタッフに報酬を払うケースも見受けられる。学生アルバイトは卒業と同時にやめるケースがほとんどであるが、離職前に後輩に声をかけてくれる仕組みができていれば、アルバイト不在期間がなく人手不足で困ることはなくなるはずだ。そのため、「自らの知人・友人に紹介したくなる職場であること」が、今後の採用対策の鍵といえるだろう。
では、どんな職場であれば紹介したくなるのだろうか。職場の雰囲気がよく、研修や教育体制がしっかりしていて、長期にわたって安心して働ける環境があり、個人としての成長の機会がある職場であれば、スタッフも知人・友人に自信を持ってすすめられる。
一方、実態が「ブラックバイト」であれば、知人・友人との信頼関係が壊れる可能性があるため紹介することはないだろう。