選挙後の混乱で同時に2人が大統領就任を宣言していた西アフリカの国コートジボワール。在留フランス軍が抵抗を続けていたバグボ元大統領を拘束し、国際社会が大統領と認めるワタラ元首相派に引き渡したことで、事態はようやく収拾へと向かい始めた(敬称略)。

数多くの投機筋が巣食うカカオ市場

コートジボアール最大の都市アビジャンの高層ビル群

 このところ、同じアフリカでもチュニジア、エジプト、リビアと続くアラブ情勢に世界の関心は向いていたが、2002年に始まった内戦が火種を残したまま鎮火、昨年末大統領選がようやく行われたものの、その結果を巡り混乱が再燃していたのである。

 4月からコーヒーが値上げとなったが、この政変でチョコやココアも値上がりするのでは、という報道もあった。というのも、この国のカカオ生産量は世界一を誇り、混乱が続くようなら供給不足になることが予測されたからだ。

 カカオ市場は、実物を必要とする業者がいる一方で多数の投機筋が巣食う場所でもあり、日に数万ドルの収益を上げるトレーダーもいて、近年の原油市場同様、乱高下を繰り返している。

 それぞれの思惑でコートジボワール情勢を見つめているようだが、結局、最後には消費者の負担へと跳ね返ってくるのだ。

 しかしながら、生産農民の苦境に比べれば消費者の負担など大したものとは言えないだろう。ことあるごとに相場は乱高下を繰り返すのだから、生活設計さえままならないのだ。

イボワールの奇跡

 今回の混乱ではカカオの禁輸措置さえ囁かれたのだが、こんな時、以前の安定した生活が戻ってこないものか、と農民たちは過去を振り返っていたに違いない。

 1960年に独立してから93年に死亡するまで、長々と続いたフェリックス・ウフェボワニ大統領の時代には「安定化基金」という機関があり、国家がカカオ農家の収入を保障していたからである。

 ところが1980年代半ば、世界的に供給過剰となったカカオの国際価格は下落、農民と輸出業者の間に入る国の負担が著しく増加することになってしまう。

 結局、大量在庫に耐えきれなくなった政府は安価で放出せざるを得なくなり、大損害を出してしまったのである。「イボワールの奇跡」とも言われるほどの成長を遂げていたこの国の経済はカカオに大きく依存していたため、経済へのダメージは大きかった。