辞任を表明したイラクのアーディル・アフドルマハディ首相(資料写真、2019年10月23日、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は1バレル=60ドル台に上昇している。今年(2019年)9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃されて以来初めてである。

 米中両国政府が貿易交渉の第一段階で合意したことから、世界経済の減速懸念が後退し、原油需要の増加につながるとの見方が広がっていることが価格を押し上げた。

OPECとOPECプラスが減産幅を拡大

 OPECと非OPEC産油国(OPECプラス)の来年からの減産幅の拡大も原油価格を下支えしている。

 OPECと非OPEC産油国の公式の追加減産の配分は、OPEC全体で日量37万バレル、非OPEC産油国全体で同13万バレルである。

 国別に見ると、サウジアラビアが日量17万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)は同6万バレル、クウェート6万バレル、イラク5万バレル、ロシア7万バレル(日量76万バレルのコンデンセートは除外扱いとなった。コンデンセートはガス田から採取される原油の一種)となっている。

 OPECプラスの直近の減産量が、8月は日量147万バレル、9月は同244万バレル(サウジアラビアの石油施設への攻撃の影響)、10月は159万バレルだったことから、日量170万バレル減産のインパクトは弱いと判断したのだろうか、サウジアラビアはその後、さらに日量40万バレルの減産を行う意向を表明した。これによりサウジアラビアの実質的な減産幅は日量57万バレルとなるが、その条件として他の加盟国が減産合意を遵守するよう強く求めている。その産油国とはイラク、ナイジェリア、ロシアである。中でもイラクは今年コンスタントに合意枠を日量20万バレル上回っている。

 加盟国のうち、ベネズエラとイランは引き続き減産義務が除外されているが、米国の制裁の影響で世界の原油市場への供給は限られている。

 協調減産の期間を来年4月以降も延長するかどうかについては、3月5日に協議するとしている。