資産運用に慣れないうちはなんとなく難しいイメージがある株式投資。「興味はあるけれども、どの銘柄を選べばいいのかよく分からない」。そんな人は、1つのキーワードをヒントに銘柄を探していくという取り組みやすい方法があります。本連載では「健康経営」をキーワードに、具体的な銘柄も含めて紹介していきます。
「自然環境にやさしい取り組みをしている企業」というと、売り上げに直結しないところにも力を入れて良い活動をしているという印象になります。また、「働く女性への配慮をしている企業」というと、就職活動中の女性ならきっと、具体的な取り組みを知りたくなるでしょう。そして「情報を開示している企業」というと、安全でクリーンなイメージにつながります。
企業のこういった取り組みは、環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governanceの頭文字を取ってESGと呼ばれ、長期の株式投資を検討する上で重要なキーワードになりつつあります。
ヨーロッパでは一般的な「ESG投資」と「ESG指数」とは?
「ESG投資」とは、環境・社会・ガバナンスに取り組む企業姿勢を考慮して投資すること。ヨーロッパやカナダなどでは運用資産全体の約50%がESG投資となるくらい、近年、世界的な広がりを見せています。そして、日本の年金積立金の一部を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)でも資産運用の方針としてESG投資を採用するようになりました。
また、「ESG指数」とは、ESGへの取り組みが優れている企業の銘柄で構成する株式指数のことです。例えば、企業が出している女性雇用や女性管理職登用などについてのデータを参考に銘柄を構成して算出した「MSCI日本株女性活躍指数」や、企業が開示している温室効果ガス排出量データなどを参考に銘柄を構成して算出した「S&P/JPXカーボンエフィシェント指数」など、さまざまなESG指数の種類があります。
そして、GPIFはこれら2種類を含め、全部で4種類のESG指数を採用し、これから先、年金を受け取る世代の年金給付を補うための資産運用をしています。
日立ハイテクノロジーズ(8036)をお勧めする理由
GPIFが採用しているESG指数は4種類あります。その全ての構成銘柄に入っている上に、前回ご紹介した健康経営優良法人にも選ばれているのが、日立ハイテクノロジーズです。健康経営優良法人かつ、ESG指数の構成銘柄にも該当しているという企業は他にもありますが、GPIFが採用しているESG指数の全てに構成銘柄として入っている企業は数少ないです。
ここで前回の話も含め、今後の銘柄選びのヒントとなるキーワードを表にまとめてみましょう。
銘柄選択キーワード
キーワード | 内容 | |
---|---|---|
健康経営銘柄 | 健康経営に戦略的に取り組んでいる一部上場企業 経済産業省と東京証券取引所が共同で選定 |
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健康経営優良法人 | 健康経営に取り組む企業を認定する経済産業省の制度 認定を受けるのに上場企業である必要なし |
|
MSCI日本株 女性活躍指数 |
女性雇用や管理職登用のデータなどを参考に算出 |
GPIFが採用する |
S&P/JPXカーボン・ エフィシェント指数 |
温室効果ガス排出量データなどを参考に算出 | |
FTSE Blossom Japan Index |
ESG評価の絶対評価が高い銘柄を選択したESG総合型指数 | |
MSCIジャパン ESGセレクト・ リーダーズ指数 |
業種内でESG評価が相対的に高い銘柄を組み入れた指数 |
表にあるキーワードのどれかに1つ当てはまるだけでも、かなりの企業努力があってこそのことなのですが、複数のキーワードが当てはまる企業を発見したら、長期投資銘柄の対象としてHPなどでさらに深く情報収集をしてみる価値はあると言えます。
健康経営銘柄かつ、ESG指数の構成銘柄にも採用されている企業の一例
花王(4452)
花王(4452)はトイレタリーでは国内首位の企業で、2019年11月には高価格帯かつ付加価値の付いた「エスト」ブランドのスキンケア化粧品を本格展開しています。花王は、健康経営銘柄選定開始の2015年から毎年、健康経営銘柄に選定されるほど、その取り組みには力を入れています。GPIFが採用するESG指数4種類全ての構成銘柄として入っている数少ない企業のひとつです。
TOTO(5332)
TOTO(5332)は衛生陶器の国内シェアが6割で、近年は海外での販売も積極的に展開している企業です。TOTOも花王と同じく2015年から毎年、健康経営銘柄に選定され、世界の代表的なESG投資の指標である「Dow Jones Sustainability World Index」の構成銘柄に8回選定されています。
ESG指数の構成銘柄に認定とか、なんとなくややこしいと思ったら・・
聞きなれない指数の名前など色々とご紹介しましたが、銘柄選びのために覚える必要はありません。気になる企業があったら、まずはどんな取り組みをしているのかを調べてみましょう。その際、環境・女性活用、人材育成・情報開示などに力を入れているかどうか、同業他社と比べてみると分かりやすいかもしれません。あまり難しく考えずに、興味を持つことから始めてみると銘柄選びが楽しくなります。
次回は別の角度から見た健康経営銘柄・健康経営優良法人の銘柄をご紹介します。