10年以上をかけて資産形成をしたいと考えた際、積立投資はとても有効な手法です。しかし積立投資にも弱点はあり万能ではありません。ただ、注意深く対処すれば、積立投資の負けパターンを回避することはできるはず。そう信じる記者が、運用するiDeCoで実践しました。

「ほったらかし」とは、辛抱へのなぐさめ言葉

 iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAで、何気なく実践している人も多い積立投資。少額からでもコツコツと投資に資金を充てられ、資産運用ビギナーにも馴染みやすい手段です。投資テクニックとしても有効で、損失が怖いといった不安を取り除くエピソードとして、記者も幾度となく用いています。でも、どうしてもメリットへのバイアスを求められることが多く、不満を感じる時もあります。あらためて積立投資の原則をおさらいします。

積立投資で知っておきたい原則
  • 定額での積立投資は、安値ではたくさん、高値では少なく抑えた量を買うことができる。
  • 積立投資では、積立期間の前半での値下がりはメリットで、後半の値下がりがデメリットになる。

 積立投資では、良くも悪くも運用期間が長くなるほど雪だるま式に効果が高まります。その結果、値動きによって極端な勝ちパターンと負けパターンが存在します。

 勝ちパターンは最良のケースで、一括投資以上に高い収益が得られます。一方で、負けパターンは最悪のケースで、一括投資以上に損失が膨らみます。

 もちろん、実際はもっと複雑な値動きになるので、いずれのパターンとも呼べないケースが多いでしょう。ただ、上下を繰り返す値動きであれば、積立投資の強みは発揮できます。

 勝ちパターンを生み出すのは、辛抱強さとそれなりの期間です。マイナスの値動きが膨らむ状況で投資を続けるのは、かなり心理的な負担が大きいはずです。また、一般に景気サイクルを10年程度と捉えれば、分散を効かせた投資であれば、10年以上の積立期間があれば、勝ちパターンに持ち込むだけのチャンスは広がります。「ほったらかし」とは、長い辛抱をなぐさめる言葉です。

 負けパターンを生み出すのは、「ほったらかし」そのものです。せっかく値が上がっている期間がありながら、みすみす収益を逃してしまい、損失が膨らむのをぼんやり眺めているのは、実にもったいないことです。”利益が出ているから、いいんじゃない?” なんてぽぉーとしてしまう姿勢そのものが、弱点なのかもしれません。

 では、どうすればいいのでしょう?

 その答えは、こまめに利益を確定させながら運用を続けること。iDeCoであれば、運用する投資信託で一定以上の利益が生じたら、一定の割合で売却し、その分で元本確保型の商品を購入します。「スイッチング(預け替え)」というメニューが、それに当たります。

 ここでいう一定程度というのは、あくまで自分で決めるルールで正解があるわけではありません。株式やREITは平均して年間にプラスマイナス10%程度の値動きがあるという見方で言えば、10%の値上がりで、値上がり分を売却するというルールでもいいでしょうし、運用期間が10年を切るような状況であれば、10%の値上がりで全体の半分を売却するというやり方でもいいでしょう。

 大事なのは、気分で動かないこと。喜ぶ気持ちも薄まりますが、ルールにしておけば、余計な不安を抱えることもありません。毎日チェックするわけにもいかないので、数ヶ月に一度、運用成果を確認して淡々と実行するのが習慣化の秘訣かもしれません。