財政赤字を拡大する余地はある

 ケインズ的なポリシーミックスは、財政・金融政策を組み合わせて完全雇用と物価安定を実現するものだが、財政支出は無駄が多いので緊縮的に運営し、総需要の管理は金融政策で行うのが1990年代以降の常識になった。

 しかし2010年代以降は、先進国で金融政策がきかなくなった。その原因は貯蓄過剰で金利が低下し、マイナス金利(金利<成長率)になったためだ。このような状況では、財政赤字を拡大して貯蓄を吸収する余地がある。

 これは最近、オリヴィエ・ブランシャール(元IMFチーフエコノミスト)やローレンス・サマーズ(ハーバード大学教授)などの主流派も主張するようになった。「実質金利<実質成長率」である限り財政赤字を出せるとすると、図のように日本にはGDPの1%近く財政を拡大する余地がある。

先進国の実質金利-実質成長率(2018)、S.フィッシャー他

 先進国のほとんどに財政拡大の余地があるが、いくらばらまいてもいいというわけではない。イタリアやギリシャのように「金利>成長率」になると政府債務が雪だるま式に増え、国債が暴落して金融危機が起こるリスクがある。

 それを防ぐには中央銀行が国債を買えばいいのだが、それによって市場に多くのマネーがあふれ、激しいインフレが起こるおそれがある。そのときは増税や歳出削減をすればいいというのがMMTの発想だが、財政はそう簡単に動かせない。国会で増税を審議しているうちに物価がどんどん上がって、ハイパーインフレになったらどうするのか。

 経済同友会は参議院に「独立財政機関」を設置すべきだと提言したが、財政をモニターするだけでは意味がない。金利や物価に即応して財政収支をコントロールする独立した機関を今からつくることは困難だ。